[201706]
「モノを食べる時はね誰にも邪魔されず自由で なんというか救われてなきゃダメなんだ。独りで静かで豊かで・・・・・・」
以前のぱる通信でも紹介されていましたが、これは『孤独のグルメ』の主人公のセリフです。
第1回の場所は『あしたのジョー』のドヤ街モデルとなった「山谷」
『孤独のグルメ』は僕にとって「読まず嫌い」の本でした。
何ていうか、カバーから『島耕作』を連想して、「やり手のサラリーマンが、高級な料理食べてアーダコーダ言うんでしょ。何か好かんぞ。俺は読まない!」と勝手に思ってました。
ただ、友人に勧められて読んだところ、コレがすごく面白いのです。
「やり手」というところは、あっていましたが、「高級」というところは大違いでした。
あんぱんだとか、カツサンドだとか、庶民的な料理を一人でもくもく食べて、その様子が描かれる。
ほんとそれだけなのですが、「こういう自然食料理のお店の机って、べとべとしている気がする」とか「俺には地方の焼きまんじゅう屋くらいがお似合いですよ」とか、ときに偏見丸出しな感じがとても人間くさく、共感を覚えます。
デパートの屋上の回では「青空をおかず」に讃岐うどんをすすります。訪問先も食べ物も庶民的なのが親しめます
さて、そんな『孤独のグルメ』でも、珍しくメッセージ性の強い章が、第12章『東京都板橋区大山町のハンバーグランチ』です。
外国人従業員の若者を「日本じゃそんなテンポじやってけねえんだよ」といびる「お山の大将」店長に、主人公は「人の食べてる前で怒鳴らなくたっていいでしょう」と憤り、冒頭のセリフを言います。
『孤独のグルメ』らしくない章ですが、作者の食事観・人生観がストレートに伝わってきて、好きな章です。
先日地元に帰省すると、モノごころついたときからやっていた本屋さんがお店をたたんでいました。
何となく続くと思っているものは、案外あっけなく終わる。
自由で、独りで、静かで、豊か・・・そんな場所がまたひとつ消えちゃったなぁ、と無常を感じました (編集A)。
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