1.プラモを積んでるのにまだ買ってしまう
・団塊ジュニア世代僕が三十代終盤まで押入れにぎっしり未組立のプラモデルを積んでいた話をします。 いまは四分の一くらいにまで在庫が減りましたが、最盛期は押入れの半分、つまり間口90センチの上下段を占拠しており、その物量は圧倒的。 一生かかっても組みきれないのは明白でした。 なぜもっと早く気づかなかったのか。 どうしてそこまで貯めこんでしまったのか。 この連載を書いていくことで自分の奇矯だった状態を明らかにしていきたいと思います。
小学生のころ「ガンプラブーム」にぶつかりました。 駄菓子屋やオモチャ屋を毎日ハシゴして棚を眺め、お小遣いを貯めてはガンプラを買い、ぐちゃぐちゃに色を塗っては爆竹や花火で破壊していました。 ここでしっかりした完成品を作れる子はまた別の道があったんでしょうが、僕はごく普通の不器用なガキでした。 わりと頻繁にガンプラを買うわりにかっこいいものを残すでもなし。 ある日弟とプラモデルをめぐって大げんかをしてしまい、ついに親の逆鱗に触れました。 そうです。簡単に買えなくなりました。 同時に部活動やファミコンブームの到来もあって、プラモデルから遠のくことになります。 たぶん同世代の男性には「あるある」とわかっていいただける流れでしょう。
・出戻りモデラーの穴「出戻りモデラー」という言葉があります。 プラモ好きの子供だった人が、大人になって経済力や技術を持ち、再び模型趣味に走っちゃったアレです。 1995年、「ガンプラ15周年記念」として発売された「マスターグレード(以下MG)」シリーズによって第二次ガンプラブームが起こり、出戻りモデラーが大量発生したのは記憶に新しいでしょう。誰の記憶だよ。 未完成のプラモって「可能性」なんですよね。 「オレにも見事な作品が作れるかもしれない」可能性。 子供のころに買えなかったアレやコレが、新しい技術でカッコよくなって再び現れたわけです。 改造ナシではややヘボだったあのガンプラが、組立図どおりに組むだけでイメージ通りに完成するわけです。 メーカーの技術向上ってすばらしいです。 耐えられるわけがないです。 団塊ジュニアは飛びつきました。 このブームが盛り上がった時期、僕は仕事の関係で某カメラ量販店のポイントをナンボでも使える立場にいました。 給料もあります。独身です。トラウマを刺激するに充分なキット。予算はほぼ無尽蔵。作業環境も申し分なし。 いまとなっては運が悪かったとしか思えません。 それまで手にとったことのなかった模型雑誌をたまたま立ち読みしてしまったが運の尽き。 僕は出戻りモデラーの穴に落ちました。
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