1.恍惚の表情をみせる小便おじさんの像!

「犬も歩けば棒に当たる」

というのは江戸いろはカルタでも有名な句である。

これは、犬も歩いていると棒という災難に当たるという意味もあれば、逆に歩くことでラッキーなことにも遭遇するという意味もある。

まあ、歩かなければ何もはじまらないということなのだろうか。

ここ10年は散歩が趣味となっている。

平均すると一日、4、5キロは歩いているのだが、歩いているといろいろなことに遭遇する。

ある夜、小さなお寺の前にあるライトアップされた桜を見ていたら、

「桜はいいよねぇ」

と後ろから声がする。

ドキッとしてふり返ったら、初老の男性であった。

「はい。桜はいいですよね」

と作り笑顔で返事をしたのだが、そのおっさんはとたんに険しい顔になって、

「でも、私はね、梅のほうが好きなんですよ」

と言いながら、延々と梅の話をし始めた。

いったい、どのくらい続くのだろうと思ったが、終わりそうにないので、

「急ぎますので、失礼します」

と逃げるようにその場を後にした。

世の中にはいろいろな人がいるものだ。

この時は住宅街だったのだが、繁華街を歩くとまた違った変な人に会う。

歌舞伎町は家から歩いて10分くらいのところにある。

風呂上がりに少し散歩をしようと出かけたのだが、いきなりおネエさんが近寄ってきて、

「お兄さん、いかが?」

と声をかけてきた。

遠目には50歳くらいに見えたが、近づいてみたら60歳くらいだ。

ストリートで客を引いているのだろう。

おもしろそうなので、立ち止まったのだが、そのおネエさん僕に近づくと、

「あら、もう終わったのね」

と言い、立ち去っていった。

終わった…? ああ、そうか。

僕の髪の毛が濡れているのを見て、どこかのホテルで女性と一戦を交えて、出てきたのだと思ったのだろう。

おかしな人に出会うのは夜が多いが、おかしなモノを発見するのは昼間である。

先日もおかしな石の像を発見した。

 

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体が斜めになっているおっさんの像だ、そう思って近づいてみた。

近くで見ると、それが小便小僧を模した像であることに気がついたのだが、どう見ても中年のおっさんにしか見えない。

しかも、股間のイチモツは短小包茎である。

まだ小便小僧のほうが大きなおちんちんのような気がする。

 

とはいえ、小便をし相当気持ちよかったのか、おっさんの表情は恍惚としている。

しかし、なんのためにこの像はここに建っているのだろうか。

意味がわからなかった。

場所は寺の前であった。

この像があるのは、近所でよく通る道である。

それまでは像の存在にすら気づかなかったのだが、いったん知ってしまうと無視できなくなってきた。

できればシカトして通り過ぎたいのだが、どうしてもこのおっさんと目が合ってしまう。

目を合わせちゃいけないと自分に言い聞かせるのだが、ついつい見てしまう。刺すようなおっさんの視線を感じてしまい、見てしまったことへの敗北感のようなものがわき上がってくる。

よせばいいのに立ち止まって見てしまうのだ。

初対面のころはおっさんの表情にためらいもあったように思うのだが、最近は余裕があるのか、おっさんはなぜか半笑いだ。

この笑いになぜか僕も反応し、半笑いを返してしまう。

なぜだかわからないが、そうなってしまうのだ。

最近はおっさんの頭をなでてから通り過ぎるようになった。

この先、おっさんと僕の関係がどうなっていくのか少し心配なのだが、それでも道を変えずに、きょうもおっさんの前を通り過ぎていくのだ。

 

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