1.今回エッセイを書いてくれた方:イヌ(柴犬)

柴犬

・「お向かい」

オレの向かいの家には小型犬のチワワが住んでいる。

チワワの奴は広くて大きな家の中で飼われているが

オレは狭い庭の中で飼われている。

オレ達イヌの中にも格差社会というものは存在しており

飼われている場所が外なのか家なのかというのは

その差が最も顕著に表れる部分の1つだった。

 

例えば雨が降った時なんかは

チワワには関係無いがオレにとっては大惨事だ。

オレは雨が降ると

普段は臭くて入ることのない犬小屋に入り雨をしのごうとするのだが

屋根に穴が開いているため、それでも多少濡れてしまう。

オレが犬小屋で縮こまっているのを窓からチワワの奴に

「カワイソウ」という目をしながら見つめられた時なんかは

それはもうなんとも言えない気持ちになってくる。

それなら蔑んだ目でオレを見てくれた方が

まだマシってものだ。

 

ウチの飼い主一家はエサの時間も適当だ。

基本的には1日2食とされているのだが

ひどい時は朝の分をスルーして1食のみにさせられる日もある。

その一方でチワワの奴は

決まって朝の7時と夜の6時にエサを与えられていたのだ、

何度チワワの奴が高級そうなエサを食べているのを見て

羨ましくなったことか。

 

何よりも腹が立つのがアイツの着ているあの服だ!

オレ達イヌには体毛があるから服なんて必要無いのに

なんでお前はセーターなんて着ているんだ!

しかも結構まんざらじゃない感じでいやがって、

着さされる時に少しは抵抗してほしいものだぜ、まったく。

 

…とまぁ、オレは毎日こんな風に

チワワに対して嫉妬心を抱きながら過ごしているわけなのだが

実はオレにもチワワの奴より優位に立つことのできる

チャンスの日というものがあった。

それは毎月第2土曜日に行われる

町内会のイヌ達による交流パーティーの時だ。

外で飼われているオレは

誰か別のイヌが前を通る度に話し掛けていたから友達も多かったし

メスとのコミュニケーションも得意だった。

それに対してチワワの奴は普段誰とも話していない上に

散歩中もほとんど飼い主に抱かれて移動しているため

全くと言っていいほどイヌ友達がいない。

この時だけはオレとチワワの立場は逆転するのだった。

やっぱりコミュニケーションっていうのは大事だよね、

1人きりじゃ何をやったって面白くないもの。

 

パーティーの最中オレが気まぐれに話し掛けると

チワワの奴は嬉しさのあまり目を潤ませてこっちを見てくるのだった。

向こうがオレのことを全く嫌っていないところが

なんともやりにくいものである…

 

鎌形のお礼コメント:

イヌさん、ありがとうございました。

とても面白かったです。

ただ原稿を送ってくれた時に原稿用紙がヨダレでビチャビチャになっていましたので

次からはメールでお願いしますね。

 

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