9.偽善にも三分の理

・善行は実にいい気分だ

目の前の年寄りに席を譲った。

これだけのことだ。

だが自分が責められている。

おかしい。

どう考えてもおかしいが何がいけなかったのか。

 

自分はロングシートに座っている

かなり高齢のおばあさんが目の前にくる

おばあさんに席を譲り目の前に自分が立つ

いいことしてやりましたよ、とほくそ笑む

おばあさんカバンをごそごそ

おばあさんお弁当箱取り出す

フタを開けるとすえた臭いが鼻を突く

糸引いた腐ったご飯をフツーに食べる

視覚的、嗅覚的に周囲撃沈

おばあさんだから食べるの遅い

周囲の矛先が自分に向けられる

自分はマスクを携帯してるので付ける

周囲から突き刺さる冷たい目、舌打ちまで

BBA

・一日一善ですよ

おじいさんに代わって車内換気で窓を開けた。

これだけのことだ。

だが自分が責められている。

おかしい。

どう考えてもおかしいが何がいけなかったのか。

 

自分は車両の真ん中でつり革に掴まっている

事故かなんかで電車はずっと停止

隣でつり革掴まっているおじいさん激しく暑そう

おじいさん窓を開けようとする

が、固いしイマイチ手が届いてない

そこへ自分が代わって窓を開ける

いいことしてやりましたよ、とほくそ笑む

運転再開、ゆっくりめで風がバンバン入る

目の前で座ってるおっちゃんらから睨まれる

「寒いだろ。いい加減にしろ」と自分が怒られる

隣にいたはずのおじいさんはもう居ない

 

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