8.ドア前の攻防戦

・ドア前の仁王立ちは危険です

ドア前のおじちゃんが降りてくれない。

ラッシュアワーの山手線・東京駅ですが…。

法やマナーというほどではないけど、“暗黙の了解”というのが電車にはあったりする。

おしゃべりなんかは別に迷惑乗車でもなんでもないが、周りにはばかることなくマシンガントークするのはどうみてもNG。

座るときにそれまで網棚に乗せていた荷物を取って自分で持つのも暗黙の了解。

法規制されているわけでもないし、マナー本に書いてもない。

 

では仁王立ちはというと、おじちゃんは押し出されるかと思ったら、真後ろの青年は爽やかに避けて降りてしまう。

女性の方もするするっと抜けていく。

すると、おじちゃんはこのままドア前をキープできるのでは、と頑張ってしまう。

小さな勇気が大きな自信になる、というパターンだろうか。

 

しかし現実は、サラリーマン軍団という背広姿の渦に飲み込まれてしまう。

リーマン陣のこの手の仕打ちは厳しいものがある。おじちゃんも転びそうになって、実に危ない。
やはりドア前に居残るのは時と場合を考えなければならないのだろう。

おそらく、密かに蹴られてもいるはずだ。

 

・神奈川乗りとは?

つい最近、この言葉を知ったが、自分はその神奈川出身である。

通学通勤に使っていた電車は、小田急、東横、京急、JRは東海道、横浜、根岸線(京浜東北線)と主要の神奈川ラインは押さえているつもりだ。

 

諸説あるようだが、ドアが閉まる直前に乗り込みドア前をキープすることを指すらしい。

降りやすい、寄りかかれる、人との接触が少ないのが利点だそうで、女性が得意としている技のようだ。

よくわからんような納得できるようなだが、なぜ名前が「神奈川乗り」なのかはさっぱりわからない。

ただ、この乗り方が良い印象を持たれてはいないようだ。

下が神奈川乗りの連続図だ。

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・“暗黙の了解”という神の鉄槌

JRの東海道線(神奈川県民は湘南電車と呼んだりする)に乗ったときのことだが、自分は上手い具合にドア横ポジションにいて、快適なひとときを過ごしている。

ドアが開けば乗降客のやりとりがあるのだが、さすがに通勤ラッシュアワーでは仁王立ちする命知らずは見当たらない。

自分的に、乗降客の荒っぽさは東海道線、高崎線、埼京線が群を抜いていると思っている。

これらの通勤電車では、爽やかな青年もしなやかな女性も皆、暗黙の了解に忠実なのである。

 

そして電車は、乗降のもっとも激しい横浜、川崎、品川と進むわけだが、自分の目の前の女性が「神奈川乗り」している。

果たしてこれはアリなのかナシなのか興味津々である。

彼女のドア前キープの執着心は相当である。

乗り込む客が皆乗り終わってもホームにいる。

どうやら、駆け込み乗車でドア前をキープされるアクシデントを防ぐつもりらしい。

アナウンスも終わりドアが閉まるまさに直前、滑り込むのだった。

これはちょっと達人級かもしれない。

 

そして川崎駅。

彼女はまたもホームに一旦降り、最後尾に下がる。

乗り降りが終わってもやはりホームにいる。

そしてドアが閉まる直前すばやく滑り込むが、どうやら神の裁きでは“ギルティ”だったようだ。

ドア前の数人が明らかに押し返している。

ぽーんと弾き出されてドアが閉まる…。

彼女は睨む。神々は満足げ。電車は行く。実はおれも押したすまぬ

 

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