20.各ポジションの実験と観察
前回、ドア付近のポジションについて問題を提起してみたが、その基礎的情報だけの紹介に留まってしまったので、今回はその実際をお伝えする。 別に大した話ではないのだが二編に分かれてしまったので、一応前文をこうしてつくってみた。
・ドア横vs神奈川乗りドア横のポジションは、乗り降りでごった返すサマを比較的安全にダイナミックに観察できる、いわば〝砂被り席〟である。 顔を真っ赤にして必死で降りようとする人、その前に踏ん張って立ち塞ぐ人、新たに乗り込む人たちの集団的圧力は御輿を思わせるエネルギーの塊だ。 そのドア横に自分がいる。 自然、ニヤニヤとなる。
だが、どういう理由でかはわからないがドア横の自分を押す人がいる。 以前に書いたことのある「神奈川乗り」をする女性だ。 神奈川乗りとは、乗り込む客たちが押す強い力に乗じて、最後の一人分のスペースを確保するわけで、基本漁夫の利のような小賢しい乗り方である。 しかし、力の流れがあればスムーズに乗れるものの、その流れがひとたび弱まったり消えてしまうと、自分の力のみで乗り込まなければならない。 そこで慌てるのか、見えない背中からドア横の自分を押すわけである。 だが、ドア横は手すりが左右にあるので、ヒト一人の力で押しのけられるものではない。 可哀想なくらい必死に押してくるけど、こちらはガードがガッチリしてるので乗り込むことができない。 押す相手を間違えてはいけない。 勝利のニヤニヤだ。
・手すりコーナーvs子泣き爺手すりコーナーは、ドア付近にもかかわらず乗る客も降りる客もやり過ごせるありがたいポジションである。 普通あの辺りは、乗降客に合わせて中を漂わなければならない。 ひと駅ていどの押し押されなら我慢できるが、長い時間の通勤電車ではそれはちとつらい。 そんな心配をクリアしてくれる手すりコーナーだが、前回も書いたように真後ろから押されるとひとたまりもないのだ。 ヒトは胸や腹を押すのはためらいがちになるが、背中は容赦なく押す。ぐいぐい押す。 あるときの自分は、受け流すように体を右に左によじってみた。 それで流され、自分から遠ざかってくれれば、という思いでしたのだが。 結果は惨敗で、背負い込むぐらいにもっと押された。
・第1つり革vs 2枚ブロック手すりコーナーは割合気に入っているポジションなのだが、その隣の第1つり革は苦手である。 もっと奥のつり革の方がスペースがあり、自分ならそうする。 第1つり革の場合、〝奥への入り口〟と表現すればいいのだろうか、乗客で詰め詰めになる最初のポジションである。 そのせいで、入り口のスペースは定員1人のところ、自分の後ろに2人並ばれたりするのだ。 自分と2枚ブロック、反対の第1つり革の人で計4人である。 この窮屈さがたまらないのだ。 2枚のうちの1人が奥に行くなりドア口に戻るなりしてくれればいいが、通勤混雑ではそう都合良いことにはならない。 自分でもどうすることもできない。
自分の足が、目の前に座るご婦人の足の間に押し入る。 こちらのメンツに掛けてそれを回避しようとする。 なんで朝っぱらからこんな苦行をするのか。苦痛で表情がゆがむ。。。
その様子を、ドア横でこちら側を向く女性がニヤニヤしている。
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