5.驚きの公共交通機関
・初乗り60円からさて連載第五回目である。この連載は五回ごとが区切りなので、今回で一様の区切りとなる。 異文化について徒然と書いてきたのであるが、今回は交通機関について触れようと思う。 交通機関というとつまらない話だなと思うかもしれないが、国や地域によってそのシステムや運用の仕方は大きく異なり、それが各国の国民性などを映している気がするのだ。 10年以上も前、僕はソウルにいてソウル市が募集していた「ソウルの話し」というエッセイコンテストに応募した。 なぜってそれは貧しい留学生にとって最優秀作品賞の賞金300万ウォンに惹かれたからである。 結果は入賞で、賞金は5万ウォンだかをもらった。 つまりは5千円くらいだ。 そして当時ソウル市長であり、後に大統領となったイミョンバク氏に賞をもらい一緒に写真をとらせてもらうという体験もさせてもらった。 その時に僕が書いたのも日韓の公共交通機関の違いについてであった。
韓国の電車は何と言っても値段が安かった。 僕が留学していた時代は初乗りが60円くらいで、幾ら乗っても他の路線に乗り換えても値段がほとんど変わらないのである。 一時間以上離れたところにいくのでも、90円くらいにしかならなかった。 当時横浜から東京まで片道500円、往復千円くらいかかっていたから、ものすごい違いである。 もちろん最近では韓国の交通費も上がって来ているとは思うが、それでも日本に比べればまだまだ安いだろう。
というか日本が高すぎるだけで他はみんな安いのではないだろうか。 NYの地下鉄は何回乗り換えても、どこまでいっても250円一律で、一ヶ月の乗り放題パスは一万円くらいだ。 それでバスにものれる。 しかも路線によって違うが基本的に24時間運行だから、誰も終電なんか気にしない。
沖縄は車社会だからそもそも電車はなく、那覇にモノレールがあるくらいで、やっぱり終電なんか全く気にしないから、超夜型社会である。 昼間は働いて、21時くらいに友達と集まって、そのまま夜中の三時くらいまで平気でカフェなどにたむろうんだそうで、沖縄のスタバは深夜までオープンしている。 とは言え、関東地方の電車網をばかにしているわけでは決してない、いやむしろすごすぎると言える。 ダイヤは分刻みで正確に運行し、駅員に聞けばどの駅員でも最短のルートを教えてくれる。
NYでは突然電車が止まり、「ここから先は行かないから引き換えします」とか、突然各駅電車が急行になっていたりとか、日常茶飯事である。
しかもそのアナウンスも地域によっては、めちゃくちゃなまりの強い英語で、スピーカーも雑音だらけなものだから、何言っているか全然分からないという事も多々あった。 最初は自分の英語力不足で聞き取れないのかなーと思っていたが、どうやら他の人もみんな分かっていないようでお互いに「何?、何?」という感じであった。
しかも実は、とういうか周知の事かもしれないがNYの地下鉄はめちゃくちゃ汚い!!溝鼠を見ない日は無いし、線路に落ちている新聞や空き缶は一生掃除されない勢いである。 エレベーターなどは息を止めないと乗れないほど臭い場所があったりし、しばらく経ってからまた同じところで乗るときに「さすがに久しぶりなので、いい加減気づいて掃除してあるだろう」などと安易に乗ると、息を止める修行の再現を強いられるなんてはめになる。
韓国の地下鉄はどうか?その当時もそれなりにきれいだったし、最近できた新しい路線などはピカピカだったりする。 ただ当時、一号線というかなりメインな電車の一区間が常に停電するという事が起きていた。
なんでかなーと思って韓国の友達に聞いてみたら、この区間と次の区間の間は送電方式が変わるとかで、電気が流れていない区間がちょっとあるとのことだった。。。 「えっ?」 じゃあその区間はどうやって走らせているのかと聞いてみたら。 「惰性で走らせているんだよ」とのことだった。 う~ん
つまりその区間のちょっと前まで充分な速度を出しておき、電力がない区間はそのままの勢いで突っ切るのである。 だから数十秒の間、車内の電気は落ち、暗くなり、エアコンも切れるのである。 その区間内でブレーキをかけなくてはならなくなった場合、再スタートは出来るのかなとか考えてしまうが、その時はその時で何とかするのであろう。 まあ慣れれば何ということもないので、OKなのだろう。 OKなのか?まあ何でも目的地に着けば良いではないか。 それくらいで運賃が安いのであれば貧乏学生だった僕は大助かりだったのだし。 今は直っていることでしょう。多分。。。きっと。。。。
・急ブレーキ急発進のナゾ韓国の交通機関で忘れてはならないのがバスやタクシーである。 なにがどうって基本的に運転がワイルドである。 急ブレーキ急発進は基本である。
ある時、なんでそんなに急発進をするのかバスの運転手に聞いてみた。 そうしたら、お客さんが後ろのほうに詰めて貰わないと、前から乗る客が乗車出来ないから、急発進することで強制的に人々を後ろのほうに送るんだとの事だった。 なるほどーって「えっ?」アナウンスとかではダメなんですか?そんな急発進で乗客を動かすってトコロテンでもあるまいし、、、 曰く「アナウンスしても動いてくれないからしかたがないんだよねぇー」。 なるほどーって「えっ」。。 納得するポイントなのかここは?うん納得しておこう。理にかなっているよな。うん。
そんなんで事故がないのかなーとか思っていたけれど、ある日新聞に、ソウル市内のバスやタクシーの三台に一台は事故経験ありとのこと。。。そうなりますよね。。。
いやいや僕はけっして他の国や他の文化をけなしたいのではないのだ。ただそういった違いがあるということだ。 一分のスケジュールに命をかけて、正確無比を社是とするあまり無理をしてしまうような国もあり、アナウンスが聞き取れない上に理不尽でも遅れても突然各駅電車が急行になっても誰も何とも思わないような社会もあり、ワイルドな運転が平均的である文化もあるのである。 大切なのは前回もいったようにその違いを自分の物差しだけで計って見下したり批判することではなく、違いがあるなーとそのまま受け止めることなのだ。 違っているから世界は面白い。そしてもっともっと見聞を広げたい。以上。
ふー何とか5回分の連載が書けた。 中にはそんなの知っているよとう内容やそれは貴方の勘違いだよという内容もあったかと思うが、馬鹿な奴だと笑い飛ばして頂ければ幸いである。
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