4.「道成寺」迷宮への6つのキーワード
・文学、芸能、いろいろあります「道成寺もの」「道成寺」というテーマの大きさは、これをモチーフにした作品群の多さでも実感できます。 説話、戯作から、三島由紀夫の『近代能楽集』はじめ、現代作家の小説・戯曲にいたるまで、さまざまに趣向を凝らした道成寺ものが生み出され、また舞台でも、能に続いて、歌舞伎、文楽、日本舞踊、その他、映画やアニメなど、多くの分野で演出されています。 古来、これほど飽きずに創造意欲をかき立てるテーマって、他に類を見ないのでは?
そうした作品には、「道成寺」が本説とわかるキーワードが含まれています。 全部でなくても、そのうちいくつかがそろうと「ああ、道成寺」ってピンとくる。 言わば「道成寺」の本質を構成する要素です。
・「道成寺」を構成する6つのキーワード「道成寺縁起」の順番から行くと、①若僧→②迫る女→③約束→④川→⑤蛇→⑥鐘、の6つでしょう。 能「道成寺」では、鐘→迫る女→若僧→約束→川→蛇、という順になります。簡単に確認しておきましょう。
①若僧 能「道成寺」の成立までは匿名ですが、その後の尾ひれで「安珍」という名が与えられました。 特徴としては若くて美貌。 女から逃げて、結局殺される。 ②迫る女 「道成寺縁起」では若後家だけど、能「道成寺」では生娘という設定。 恋の執心から蛇と化します。 女の方ももとは匿名で、後に「清姫」と名づけられ、2人合わせて「安珍・清姫」と言えば「道成寺」の物語を指しますね。 ③約束 「道成寺縁起」では、迫る女をなだめるため、若僧は「道成寺参詣を済ませたら戻って来る」という偽りの約束をします。この嘘が、女の執心を怒りの炎に変える。一方能「道成寺」では、約束を発するのは僧ではなくて、娘の父親。「あの客僧こそ、お前の夫」という父親の戯れ言が、約束として娘にインプットされます。 ④川 若僧との間を隔てる大障害。女の一念でこの川に飛び込み、蛇となって渡り切る。能では蛇に変身する条件となっています。ただし川は絶対条件ではなくて、川がなくても女は蛇になるのでして、この点は次回確認しましょう。 ⑤蛇 恋の執心が、女を蛇に変えます。 ⑥鐘 逃げる若僧を隠した道成寺の大鐘。 鐘の中に隠れたのがアダとなり、蛇女はこの鐘に巻き付いて、僧を焼き殺す。
5.尾ひれ・転々「道成寺説話」―突如「川」が加わった に移動
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