10.今回エッセイを書いてくれた方:ノートパソコン

ノートパソコン2

・「権利なき労働者」

私はよく外に持ち出される方のノートパソコンだ。

私の主人はシステムエンジニアなる職業についており

どんな作業をする時でも必ずパソコンが必要になるらしい。

そのため家にいる時は先輩パソコンであるデスクトップさんが、

外出している時は私が彼の仕事道具として働いているというわけだ。

 

デスクトップさんはいつも主人と一緒に出掛けていることを羨ましがっているが

私にとっては家に居られる方が羨ましい。

外にいると決して心が安らぐことが無いからだ。

 

この気持ちを理解してくれるための例として一番分かりやすいのが

電車に乗っている時の話だろう。

私の主人は電車に乗っている時でも周りに構うことなく私を取り出し

膝の上に置いて作業を行うのである。

その時の周りにいる人間からの迷惑そうな視線を受けるのが

私は恥ずかしいし嫌で仕方が無いのだ。

だが図太い神経を持っている主人は全くそんなことを気にしていないようで

公共の場だろうとテンポ良くキーボードの音を鳴らしながら仕事を進めている。

あんな状況でしっかりと作業ができているのだから

ある意味彼は大物だと言っていいだろう。

 

主人は喫茶店でもよく私を使っている。

そこには無線LANもあるし

店側もノートパソコンを使うことを前提としたサービスを提供しているので

主人のような人がたくさんいて居心地は悪くないのだが

前述の通り私の主人は神経が非常に図太い。

半年ほど前だろうか、私は一度喫茶店にいる時に

主人におもいっきりコーヒーをかけられたことがあるのだ。

液体は我々にとっての最大の天敵だ、

しかもそれに加えてかなりの高温だったものだから

あの時は本当に死ぬかと思った。

それ以来、私は喫茶店にいる時は

横に置いてある紙コップが倒れてこないか心配で

心が穏やかになったことがないのである、

これでだいぶ私の辛さを分かって頂けただろうか。

 

それなら家にいる時は休めるのかと言ったらそうとも限らない。

時々主人は書斎で寝ている私を叩き起こして

デスクトップさんとのダブルでパソコンを使用する時があるのだ。

その上電源を消さずにそのまま寝てしまう時もあるため

何時間も付けっぱなしにされてしまった時には

体は疲れるわ暑いわでとても辛いのである。

仕事熱心なのはいいが誰にでも適度な労働時間というのはある。

まだなんとかやっていけてはいるが

いつか私は突然電源が切れて過労死してしまうのではないだろうか、

今はそれが心配で仕方がない。

 

鎌形のお礼コメント:

ノートパソコンさん、ありがとうございました。

随分苦労されているようですね、

きっとこれを読んだ読者の方達の多くが共感していることと思います。

ところで電子メールで原稿を送ってくれたようですが

あれは自分のキーボードを打って書かれたのでしょうか、

それとも別のパソコンを使われたのでしょうか?

正直、内容なんかよりもそのことが気になってしまいました…

 

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3 Comments

  1. Pingback: エッセイ。但しヒト以外の

  2. 純二

    はじめまして

    他のライターさんに使われている
    ノートパソコンです

    私も同様の経験をしましたので
    良くわかります。

    ただ自分は
    電車で使われるには、高齢のゆえ
    バッテリーもすぐ切れてしまうし

    さらに
    最近では、大変ぼけてきて
    大してソフトをたちあげていないのにもかかわらず
    しょっちゅう脳がフリーズしてしまいます

    僕の寿命はもうすぐな気がします

    あなたはまだ若そうなので
    がんばって下さい!!

    • 鎌形 剛

      コメントありがとうございます。
      おそらく彼もこのコメントを読んで勇気づけられていることでしょう。

      しかしもうすぐだなんて悲しいことを言わないでください~…

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