2.手で酔うか、菌を放し飼いにするか

中学生の頃はソックタッチ、高校生の頃は持たせてもらったばかりだった携帯電話、そして26歳の現在は、アルコールである。

これは私と顔が似ているものでも、私が一番上手に描くことができるものでもない。

何についてのことかと言うと、私が手放せなかったもののことである。

ソックタッチに似てる顔って。

それにソックタッチが一番上手に描けるのなら、その前にリップクリームのはずだ。

現在私が手放せないのは、アルコールといっても、お酒のことではない。

むしろ私は、お酒を全くと言っていいほど飲めないのだ。

私が手放せないアルコールとは、除菌や消毒のアルコールのことである。

そんな、アルコールが手放せないのも、お酒が飲めないのも全部、私に異様な不安感がつきまとっていることにつながるのだ。

アルコールが手放せないのは、下痢に見舞われることに日々怯えているためである。

世にはびこるあらゆる菌やカビを、うっかり体内に入れてしまい、それらに刺激され、下痢に見舞われることを想像し、こわくなるのだ。

そのため、食事のとき以外でも、納豆のミイラがあるテーブルを触った後や、かかとに薄さを感じる靴で外を歩いた後の、どんな雑菌がついているかわからない足の裏に踏まれた毛布などを触るたびに、除菌シートで手を拭いている。

最近は、ポンプを押すとアルコールが出てきて、それを手に刷り込むというタイプのものも使っているが、毛布を触った後に、シートでなくポンプの方で除菌をすると、アルコールが接着剤となり、毛布のほこりや繊維が手にまとわりついてしまう。

そのため毛布を触った後に使うのは、除菌シートの方が断然向いていることを知った。

というのはどうでもいいのだが、そんなわけで私は連日、何枚もの除菌シートで手を拭き、ポンプから飛び出すアルコールを何度も手に刷り込んでいるのだ。

少し、お酒の話をしよう。私がどうしてお酒を全くと言っていいほど飲めないのかというと、前述のとおり、不安感のせいである。

私が下痢の次に怯えている体調不良が、吐き気なのだ。

吐き気に襲われることに怯え、私はお酒が飲めない。

あるとき、ふと不安になった。毎日手にアルコールを塗りたくっているが、この手を舐めたり吸ったりしたら、酔って気持ち悪くなってしまう量なのではないかと。気にし出したら、手が口の付近にいくだけでこわい。

安心するには、手の除菌の回数を減らすしかないのか。

しかしそれは私にとって、滝に打たれながら鬼ごっこをすることに匹敵するほど、辛く厳しいことである。

私は手で酔うか、手で菌を放し飼いにするかという問題に直面した。

第二回イラスト

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