12.今回エッセイを書いてくれた方:プラットホームの時計

プラットホームの時計

 「変わらないものと変わってしまったもの」

私がこの場所で働き始めてから果たして何年が経っただろうか。

こうして人間達に時間を知らせる仕事をしている私だが

案外自分に対しての時間にはルーズで、

今では自分が何歳であるかもわからない。

おそらく10年以上はこうして同じ場所に居続けているとは思うのだが

私が新人だった頃と今を比べても

実際のところ目にする風景はほとんど変わっていなかったりする。

 

朝の時間帯には同じような服装をした人間達が列をなして並び

電車が来ればたとえ満員であろうと体を押し込めて無理矢理乗車していく。

遅刻を回避することには果たしてそれだけの価値があるのだろうかと

その風景を見て私はいつも思う。

それとは打って変わって夜の時間帯になると

今度は仕事から解放された喜びからなのか、

やけにテンションの高い人達がぎゃあぎゃあと騒ぎながらホームに並んでいる。

同じ人間が朝と夜で全く違う顔を見せるのだから

ヒトというのは不思議なものである。

 

私がいるこのプラットホームは

「別れの場所」であると言ってもいいだろう。

いわゆる「シンデレラエクスプレス」なる男女のやりとりを

今も昔も私はよく目にしている。

それをしている時のカップルは人目もはばからず体を寄せ合っていて

他人の目線など全く気になっていないようだ。

たとえ他の人間が周りにいなくても私からは見えているのだから

そのあたりはもう少し気を付けた方がいいのではないだろうか。

 

ただこの数年間で明らかに変わったことが一つある。

それはほとんどの人間が電車を待っている間

スマートフォンなる機械にずっと目をやりながら待っていることだ。

 

一昔前までは携帯電話なんてものは存在せず、

みんな思い思いの方向に目を向けていたというのに

今ではほとんど全員が首を下に向けていて

その風景は正直言って少し気味が悪いのだ。

 

そこで先日、そんなに面白いものなのかと

私もスマートフォンなるものを試しに購入してみたのだが

正直言って驚いた。

…面白いではないか。

 

通話やメールが出来るだけでなく様々なアプリケーションなるものがあって

この機械一つあれば何でも出来てしまうのだ。

しかもメール一つを取ってみても、このスタンプ機能なるものが

とても種類が豊富でどんどん送りたくなってしまうではないか!

今では私もスマホなしでは生きていけないようになってしまったのだった。

 

今後みなさんが東京のどこかで

スマホをいじっている時計を見かけることがあるかもしれないが、

その時はあまり気にせず笑って見過ごしてほしいと思う。

 

鎌形のお礼コメント:

プラットホームの時計さん、ありがとうございました。

原稿を送って頂くまでのやりとりをLINEでさせてもらいましたが

スタンプが多かったですねぇ~。

基本返事がスタンプだけだったので意味を考えるのが大変でしたよ。

また機会があれば宜しくお願いします。

 

次回は「カレーライスのエッセイ」です、お楽しみに。

 

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