1.ちょっと大人の下谷七福神をめぐる

七福神めぐりが好きで、これまで都内の七福神をかなりめぐった。七福神めぐりのいいのは、とくにルールがあるわけではなく、自由なのがいい。まわる順番もどこからでもいいし、一日でなく、何日かかけてもいい。

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そして、なにより無料だというのがうれしい。

ただし、元旦から七日までなど一定の期間のみ色紙や神様を模した小さな人形を販売していたりするので、こういったものには金がかかる。情報はネットなどで入手できるので、チェックしてから出かけたほうがいいだろう。

色紙に御朱印をもらうのは、スタンプラリーのようなかんじで、七つそろうと達成感がある。色紙は有料のおところもあれば、無料のところもある。

ところで、人間なら1人、2人。鳥は1羽、2羽。犬は1匹、2匹という数え方だが、神様はどう数えるかご存じだろうか。「柱」だ。1柱、2柱という数え方だ。

七福神は七柱ということになる。ところが、コースによっては、同じ神様が2柱いて、八カ所まわるところもあり、けっこういい加減だ。そのいい加減さも好きな理由かもしれない。

というわけで、ざっくり七福神の神様を説明しよう。

【恵比寿(えびす)】鯛を左手で持ち、釣り竿を右手に持った姿で描かれる商売繁盛、五穀豊穣をもたらすと言われている神様。この神様が唯一日本由来だ。ということは、あとの神様はみんな海外由来ということになる。

【大黒天(だいこくてん)】元はインドのヒンドゥー教、シヴァ神の化身、マハーカーラが日本の神道の神様、大国主命(おおくにぬしのみこと)と合体してできた神様。打出の小槌と大きな袋を持っている。

【毘沙門天(びしゃもんてん)】元はインドのヒンドゥー教、クべーラ神。戦いをつかさどる神として武将の姿をしていることが多い。

【弁財天(弁財天)】七福神では唯一の女性の神様。元はインドのヒンドゥー教の女神、サラスヴァティーが元になっている。財産をつかさどる神様だ。

【福禄寿(ふくろくじゅ)】中国の道教の南極老人星の化身。招福、人望の神様だとされている。

【寿老人(じゅろうじん)】こちらも同じく道教の南極老人星の化身。どうも、福禄寿と区別がつかなかったりする。長寿をつかさどる神様だ。

【布袋尊(ほていそん)】中国に実在したという仏教の禅僧。その太っちょな体つきで人々に愛されたんだとか。笑門来福、夫婦円満、子宝の神だ。

一般的な七福神だけれど、福禄寿と寿老人のキャラかぶりが、どうにかなんないもんかと思ってしまう。そのため、どちらかをはずして美の神様、吉祥天(きっしょうてん)や中国の想像上の動物猩々(しょうじょう)などを入れるところもある。

また、港七福神めぐりは八カ所をめぐる。これは七福神に宝船が加わっているのだ。

そして、そんな七福神が祀られている場所も、神社だったり、お寺だったりと神仏が混在しているところが多く、そんなところも僕は好きだ。

 

・鶯谷駅エリアの神様をお参りする

前置きが長くなったが。家から歩いて行ける七福神へ出かけてみた。初心者にもススメの下谷(したや)七福神だ。コースとしてはJR鶯谷駅から東京メトロ日比谷線の三ノ輪橋駅へ歩くかんじで、距離は約3km。前述したようにどこから始めてもいい。ちなみにJR鶯谷駅からすぐの場所にある元三島神社は、ラブホテル街のど真ん中にある。カップルの方なら、こちらをゴールにして、新年の姫はじめというのもアリだろうか。

そんな相手はいないよという殿方には、東京のディープゾーン“吉原”の近くを通るのでそちらの利用も視野に入れてもいいかもしれない。

なにかとアダルトな七福神めぐりだが、さらにいいのは、こちらの七福神めぐり、御朱印などは一年中対応してくれるようだ。

ちなみに“下谷”という名前だが、今は台東区下谷という地名として残っているが、かつては区の名前だった。今の台東区の西側が明治一一年に下谷区に制定され、昭和二十二年に浅草区と合併して台東区が誕生するまで存続していた。

さあ、実際に歩いてみよう。まずは①元三島神社/寿老人(台東区根岸一の七の一一)。ちなみに番号は、今回自分がまわった順番ということだ。鶯谷駅からすぐの場所、ラブホテル街のど真ん中に鎮座する元三島神社。寿老人が祀られている。その由緒は古く、元寇のころまでさかのぼるのだそうだ。JR鶯谷駅周辺に4柱の神様がいらっしゃる。言問通りを東へ行こう。若い人にはわからないかもしれないが、「恐れ入りやの鬼子母神」という香具師がよく使ったフレーズでおなじみの②入谷鬼子母神/福禄寿(台東区下谷一の一二の一六)だ。東京メトロ日比谷線の入谷駅からほど近い場所にある。境内に近隣の4柱の神様のマップがあるので、チェックしておくといいだろう。密集しているのだけれど、意外にわかりにくい場所にあるので、チェックしておくといいかもしれない。

言問通りを渡り、根岸一丁目交差点から根岸三丁目交差点へ向かうと③英信寺/大黒天台東区下谷二の五の一四)がある。なんと、こちらの大黒天は珍しい三面大黒天。これ、大黒天に毘沙門天、弁財天をプラスした最強の神様なんだそう。ご本尊はたしかに3つの顔がある。

その近くにあるのが法昌寺/毘沙門天台東区下谷二の一〇の六だ。元プロボクサーのたこ八郎さんの菩提寺だったこともあり、境内にはたこ八郎地蔵がある。胴体部分にはたこさんの遺筆であり、よく口にしていた「めいわくかけてありがとう」の文字がある。

 

・竜泉から三の輪エリアの神様をめぐる

昭和通りを北上すると、住居表示が竜泉にかわる。遊具が置かれた弁天院公園に隣接しているのが⑤弁財院/弁財天(台東区竜泉一の一五の九)だ。池があって、まさに弁財天の雰囲気。そこから国際通りを越えると⑥飛不動正宝院/恵比寿台東区竜泉三の一一の一一があった。

ここで昼に歩き始め、どこかでランチをと思っていたのだが、めぼしいところは見つからず、この飛不動近くの『赤のれん』(台東区千束三の三二の四)という町中華に入ることにした。ごく普通の町中華。先客はカップル一組、男性一名。チャーハン気分だが、先客はみな麺を食べているようだ。ということで、広東麺を注文。海老、豚肉、野菜など多くの具材が美しくあんかけにされた一杯。かなりおいしかった。千円札を出すと200円のおつり。800円だ。

そのまま北上すると『一葉記念館』(台東区竜泉三の一八の四)がある。明治時代の作家で竜泉に住んでいたことがある樋口一葉の記念館だ。入園料三〇〇円。

そして、最後の布袋尊をめざす。東泉小学校の西側に⑦寿永寺/布袋尊(台東区三の輪一の二二の一五)へ。こちらには、豪快な布袋尊のお姿がある。リンゴが供えられてるのが印象的。さて、ここから、三ノ輪橋駅はすぐだ。

七福神めぐりは、全国各地にあるので、自分の家から近いところをさがしてみてはどうだろう。

歩いて帰宅したので、かかった金額は広東麺の800円だけだ。

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