19.スターリン共産党書記長の魅力

スターリンは独裁者と呼ばれ、1千万人以上の人々を殺害しますが、性格は謙虚でした。

「私は、たんにレーニンの弟子にすぎない。私の念願はレーニンの弟子に価するということだけです」

健康にも恵まれ、ぶどう酒で20回乾杯した後でも普段と変わらずに仕事ができました。

私生活も潔癖であり、女性も金もスポーツも愛さず、ソ連の発展に尽くします。

科学や技術に高い関心を示しますが、専門家と競争することは無く敬意をもって接します。読書家であり、外国の書物、文献、新聞を翻訳させ、毎日目を通します。また、疑問を持つと即座に専門家を呼び説明させていました。

 

外務大臣であった松岡洋右は、スターリンを徳川家康に例えます。

スターリンは我慢強い人柄であり、対談者の話を1時間でも2時間でも聞き入ります。スターリン書記長と接した人は、豊富な知識や鋭い質問、そして相手の話を慎重に聞く態度に魅了されます。

 

スターリンを批判したフルシチョフ書記長は回想録で次のように述べています。

「私は、一つの点についてスターリンを認めたい。彼は決して剣を携えて我々の心や肉体を征服したわけではないということである。彼は人々を服従させ、操縦することにその卓越した才能を発揮したのだ。これは偉大な指導者に欠くことができぬ重要な資質である」

 

モスクワ駐在米海軍武官のジョン・ダンカン大佐は宴会でスターリンに放言します。「共通の敵に対する戦争において、勝利するために必要な情報を収集するのが私の仕事ですが、残念ながら私の仕事に援助して下さる方がただの一人もありません」

スターリンは満面の笑みをこぼして立ち上がり、ダンカン大佐の席に行き乾杯してから、振り返って一座の者に向かって言い放ちます。

「この人は、思ったことを率直に言う。私はこういう人が好きです。ダンカン大佐、今日から私があなたの情報将校になりましょう」

宴会後、スターリンはダンカン大佐をソ連海軍の最高司令官に引き合わせて「ダンカン大佐の知りたいことは、何でも話してやってくれ」と指示しています。

 

独裁者は権力と知性を兼ね備えているためとても魅力的です。

1千万人以上を殺害したスターリン書記長も非常に魅力的な人物でした。

「良く来たね。私もアジア人だ」と松岡外務大臣に抱擁して日ソ中立条約を締結、日本を南進させて破滅させることに成功しています。

 

独裁者は最高の役者であることを忘れてはいけません。

 

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