15.ウソみたいだろ、死んでるんだぜ #wf2014s

・イカもタコもクモヒトデも

まずは写真を見ていただきます。

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すんげえリアルな海洋生物のフィギュア、でしょ。

これ、本物なんです。

「ええええー?」って思いましたか。

僕も現地で「ええええー?」って言いました。

イカもタコもクモヒトデも、本物から作られた生物標本なんです。

そりゃあリアルなはずですわな。

しかしちょっと待ってください。疑問に思いませんか。

なんで真夏の幕張メッセでむきだしのまま置かれてて平気なんだよ、と。

なんでこんなに生き生きとした状態で標本化できてるんだよ、と。

現地でこれを目の当たりにしたらですね、これらの疑問が一気に湧き上がり、眼前のリアルキモいビジュアルと相まって、脳みそがグラグラしましたよ。

だってありえない光景ですよこれは。

 

・お前も蝋人形にしてやろうか

人体を輪切りにした標本があるのをご存知ですか。

プラスティネーションと呼ばれる技術なのですが、人体の水分を樹脂と置き換えることでカチカチの状態を作り上げ、輪切りにしたり神経や血管だけを抜き出してみたり、医学発展のための教材として使われるものです。

カチカチだから輪切りにできるわけですし、樹脂なので腐りもしない。

かなり便利な技術なんです。

で。 これら海の幸の標本は、そのプラスティネーションで作られたのだそうです。

安心しましたね。

臭くないですよ。

内臓も骨も生きてた時のまま入ってるんだって。マジすごくね?

「持ってみてください」と言われて持ってみました。

 

・えええええー! やわらかい!

イカの触腕がくねっくねだ! タコを揉みまくってしまう! クモヒトデの脚がびろんびろんする! プラスティネーションってプラスチック固化だよね? なんでこんなに動くのか。

その理由は、体液を置き換える素材がシリコンだからなんだそうです。

なので、自在に動く生物標本を作ることができているんです。

生きてたままの姿で永遠に保存できちゃう。

機械の身体なんていらんかったんや! メーテル、星が消えるよ!

 

・バイオとケミカルの融合

この技術を持っているのは吉田生物研究所。

ワンフェスの企業ブースに出展されていました。

バイオとケミカルを横断的に利用し、生物標本から埋蔵文化財の保護、たんぱく質などの生物関係の分析を行っている株式会社です。

僕ら素人が考える海産物の標本って乾燥させた固いものがイメージではありませんか。

乾燥させて提灯みたいになったハリセンボンが実家にあったのを思い出したでしょう。

親がどっかのお土産でもらったのでしょうね。

触れば痛いし、掃除しにくいからホコリまみれだし。

海の幸系生き物が、こんなにしっとりした状態で、自在に動くコンディションで標本化されているなんてかなりの衝撃でした。

 

・男前な仕事

ところがですね。

実はたぶん、これに触ったことがある人も少なくないはずです。

沖縄の美ら海水族館なんかにこの標本は置かれているのだそうです。

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サンゴの天敵オニヒトデも触れます。

くねくねと動くのに、トゲの部分は硬くて痛い。

ゴム製のオモチャでこの手触りは難しいです。

さすが本物。

そしてこのシリコンプラスティネーションによる標本にはさらに有益な価値がありました。

盲人用の教材になっているのです。

安心して触ることができて、無害で、壊れにくい。

生き物がどんな大きさと形をしていて、トゲがあったりヒレがあったりやわらかい部分があったりするのを実際に触って学ぶことができるんですね。

バイオとケミカルのガチガチに理系でストイックな研究の成果によって、感じることができる世界が大きく広がる人がいるという事実に僕は胸が詰まる思いがしました。

男前な仕事じゃねえですか。

 

・その瞳には科学への希望の光が宿るのだ

体液をシリコンで置き換えて標本化することができるなら、ということで質問してみました。

クラゲはできますか、と。

できません、と。

わーん残念! クラゲはあまりに水分が多すぎて組織が壊れやすく、網ですくってもバラバラになってしまうほどだと言われています。

そのために捕獲も難しく、研究があまり進んでいない種類も多くあります。

このプラスティネーション技術でクラゲを触ることができたらナンボおもしろいかわかりません。

僕は期待しています。

バイオとケミカルの研究の発展を。いつの日かクラゲの標本ができる日を。 このイワシの眼をご覧なさい。

死んだ魚の眼にはほど遠いフレッシュな光。

科学発展への希望が、生きる意思が感じられるじゃないですか。

死んでるけど。

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吉田生物研究所 http://www.yoshidabio.co.jp/index.html

 

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