
・「30分弱に1回」の習慣を捨て去る
約8年前、26歳のときのこと。
それまで1日1箱半ほど吸っていたタバコを一切やめた。
そのとき取り組んでいた社会人サッカーで、あまりにも体力が衰えてきていたことから、何とかしなければという思いで自身の聖域に手を出した。
1箱半というと、本数に直すと30本。
1日18時間起きていたとするとだいたい30分弱に1本は吸っていた計算になる。
「30分弱に1回」の習慣を捨て去るのは容易ではない。
もちろん、環境が禁煙を後押ししてくれたことは否定しない。
今ほどではないにせよ、当時タバコを吸う環境が徐々に限られ始めていたことは確かだ。
歩きタバコ条例が出来始めたり、電鉄各線の駅構内で、次々とオープンな喫煙所が姿を消し始めてもいた。
例えば、電車に乗る前に1本吸おうと試みる。
当時は、ホームの一番前か一番後ろのどちらかにしかオープンな喫煙所がなかった(今は首都圏では、どこを見渡してもそのような喫煙所は見当たらない)。
しかも、案内は出ていない。己を信じて歩くしかない。
当たればラッキー。でも外れていたら、わざわざもう一度ホームの端から5分近くかけて逆方向の端まで行かなきゃならない。
「何やってんだ、俺は……」
そんな自分に嫌気がさしていた。

・「負けるな、俺」と、枝豆を頼みまくる
しかし、禁煙を始めて数ヶ月。それ以上に苦しい日々は続いた。
仕事で行き詰っても、もう逃げ道はない。外で休憩といっても、煙がなければカッコはつかないし、無駄に携帯をいじるか、ストレッチ体操をするくらいしかやることはない。
かえってストレスが溜まる。
喫煙仲間とは自然に距離が生まれた。
「一服行かない? あっ、やめたんだっけ?」と別のメンバーがアサインされる。別に自分の実力が劣っているわけではないのに、なぜか感じる劣等感と孤独感。
中でも、酒席が一番辛かった。
ほろ酔いになり、威勢が良くなってきても、手と口は寂しいまま。
目の前には美味しそうにタバコをくゆらす同僚の姿。
「負けるな、俺」とばかりに、枝豆を頼みまくり、ひたすら手と口を動かし続ける。
2時間ずっとガムを噛みながらその場を凌いだこともある。
振り返ってみても、あれはなかなかキツかった。
夢にも出てきた。「ヤベッ、ついに吸っちゃったよ…」というシーンでだいたい目が覚める。
決断に後悔はしてないけど、思えば結構苦しんだものだな…。
世の未成年諸君。
もし途中で挫折するくらいなら、最初から吸わない方がいいかもしれないぞ。
ニコチン中毒とは、かく恐るべきものなり。
(了)
その3「白髪染め(継続中。2年目)」
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