21.邪悪にして荘厳、神々しいまでに禍々しい「妖鳥シレーヌ」

・実写映画のことはさておき

永井豪の『デビルマン』に妖鳥シレーヌというキャラクターがおります。

名前の通りギリシャ神話に根っこを持つ半人半鳥の女性の魔物で、白い羽と猛禽の手足、美しい女性の裸身が特徴です。

正直、地中海のどっかの島に石像があってもおかしくないタイプの定番の神像です。

あのーえーと、実写映画のことはとりあえず置いといて、こちらをご覧ください。

 

・恐怖の感情を立体に再構成

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過剰にメリハリを効かせた美しい女体と末端肥大プロポーションで遠近感を誇張したボディ部分のセクシー&スタイリッシュは言うまでもありません。

翼、見るべきは翼です。

シレーヌ最大の特徴でありチャームポイントである頭から生えた翼に加えられた大胆なアレンジ。

羽根のようでもあり、鱗にも見えて、石造りの教会の屋根にも似た意匠が連なります。

よく見るとガーゴイル(教会の屋根にある魔除け像)まで付いています。

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シレーヌ本体を包み込むような大きな螺旋を描いて立ち上がるシルエットも、建造物と生物と羽根のすべてのイメージを兼ね備えます。

フィギュアそのものも巨大なので、見たときの第一印象は「わけがわからんがとにかくすげえかっこいい」となります。

邪悪にして荘厳、神々しいまでに禍々しい。

永井豪の原作から読み取れる恐怖の感情を再構成してフィギュアの形に作り上げたイメージの確かさと純粋な造形技術に圧倒されます。

 

・二次創作ってなによ

オタク文化界隈でよく言われる「二次創作」という言葉があります。

既存の作品やキャラクターを使った創作物、借り物の作品のことであり、オリジナリティという点で一段低く見られがちなところです。

ガレージキットがスリリングで刺激的なのは、オリジナルをどう解釈するのかという部分で驚異的なブツが現れることがあるからです。

二次創作ではあるものの、自分ではイメージできなかったストレンジな「現実」をものすごい説得力で見せてくれる造形師がいるのです。

 

もういっちょ、別のシレーヌを見てみましょう。

 

・チリチリとした羽毛の毛羽立ちはまさに魔獣

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イラストレーターの寺田克也氏が描いたシレーヌの立体化です。

色っぽい女性の身体、チリチリとした羽毛と六枚羽根が力強くておっかない。

落ち着いた表情が凶悪さを際立たせてます。

まさに魔獣、という趣きがあります。

元絵にある迫力やセクシーさやかっこよさをギリギリまで拾い上げて立体解釈をした、ぶっちぎりの作品です。

構図や道具立てなどは寺田克也氏の想像力の賜物ですが、それをこの精度で仕上げてくる手腕が非凡です。

簡単な言葉になりますが、本当にかっこいい。

ちなみにこっちが元のイラスト。

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・本流のフィギュアとオルタナティブのガレキ

ガレージキットの醍醐味はその解釈の自由度だよね、ということはこれまでも何度か申し上げた気がします。

アニメキャラのフィギュアって設定画やイラストにどれだけ似ているか、という部分を問われるものだったりします。

だってねえ、好きなキャラクターを手元に置きたいのに、それが中国かどっかの遊園地にあるようなブートレグっぽいヤバめの再現度では残念すぎるじゃないですか。

お客さまの理想どおりに整った容姿の美少女や美男子、かっこいいメカであることが求められるのがマスプロダクト商品の宿命です。

つまり最大公約数的で無難なデザインに落ち着いていく方向です。

 

そのような「本流」があるおかげで、オルタナティブであるガレージキットには解釈自由な遊びが許されるわけです。

ときに、アートの分野に片足を突っ込んだようなすンごい迫力のものが現れる要因でもあります。

妖鳥シレーヌの形にはもともと「正解」があります。

その上で、立体物としての面白さとかっこよさの観点から解釈したものと、魔獣らしさを突き詰めたイラストに突き動かされてこしらえたもの。

このふたつの解釈どちらもまた「正解」であり、我々を圧倒する作品になってるわけです。

元のキャラをどう解釈するのか、という楽しみは果てがありませんのよ。

 

次回はファニーな紙のロボット。

 

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