22.今回エッセイを書いてくれた方:電車の端の席

電車の端の席

・私が選ばれる理由

それにしてもどうして人間は私の上に座りたがるのだろうか。

私はかれこれ20年以上

こうして乗客を座らせるために同じ場所に居続けているが、

つくづくそう思わされる。

 

このエッセイを読んでいる人間の皆さんに尋ねてみたいのだが、

もし車両内にある座席が全て空いているとしたら

一体どこに座ろうとするだろうか?

おそらくほとんど全員の者が端の席を選ぶことだろう。

何せ座席いっぱいに人が座っている時に

私の上に座っていた乗客が電車から降りると、

その隣にいた人間がわざわざ腰を上げて

こちらに移動してくるくらいなのだから。

私は勤務中のほとんどの時間、誰かを上に座らせているため

他の席に比べて過酷な労働を強いられているのである。

 

私は一度自分の人気の理由が知りたくて、

たくさんある選択肢の中から

わざわざ座る場所として私を選んでくれた乗客に対して

質問をしたことがある。

するとこんな答えが返ってきたのだ。

 

「いやぁ、なんとなくとしか言いようがないですねぇ…」

 

私は何人かの人間に同じ質問をしてみたのだが

誰に聞いても具体的な答えは返ってこなかったのだ。

端の席を選んだ人間自身にもその理由が分からないというのは

私にとって驚くべき事実だった。

 

そこで私はふと思った。

もしかしたら私は

何か人を惹きつける特別な魅力を持っているのかもしれない。

そういえば私は学生時代に

自分から何もアプローチをしていない女子から

告白されたことがよくあった。

もしそういうことなのであれば

私はこんな誰にでもできる仕事をしながら一生を終えるのではなく、

例えば芸能人のような

人気がものをいう華やかな職業に転職した方がいいのではないだろうか。

 

そんなわけで私は現在

安定した生活を捨てて芸能界入りに挑戦をしてみようか

本気で悩んでいるところである。

写真を見てもらっても分かる通り

私は「電車の席界」の中ではかなり男前な方だと思うのだが

いかがだろうか?

 

鎌形のお礼コメント:

電車の端の席さん、ありがとうございました。

アナタのためを思って言っておきますが、

それは完全にアナタの勘違いです!

場所が魅力的なだけであってアナタ自身には誰も興味を持っていないので

そのような儚い夢を見るのは今すぐにやめましょう!!

 

ただそう言う私も端の席に座るのは大好きです。

今後も毎日のように電車の端の席にはお世話になるかと思いますので

よろしくお願いしますね。

 

次回は「ライオン(オス)のエッセイ」です、お楽しみに。

 

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