8.金のカッパを見に行く
上野から浅草をつなぐ東西にのびる商店街を『かっぱ橋本通り』という。 よく似た名前の商店街として、『かっぱ橋道具街』というのがある。 『かっぱ橋本通り』を南北に横切る商店街で、浅草通りから言問通りまで続いている。 家庭で使うキッチン用品からプロが使う道具まで様々な料理器具が売られている商店街で、世間的にはたぶん、道具街のほうが有名なのだと思う。
町の古老に聞いた話だと、この2つのかっぱ橋の商店街は、かつてどちらが“かっぱ橋通り”を名乗るかでもめたのだそうだ。 しかし、話し合いの結果、どちらも名乗らないということで決着。“道具街”と“本通り”になったそうだ。
さて、かっぱ橋本通り商店街を歩いてみよう。 浅草国際通りへ。最寄り駅は、つくばエクスプレスの浅草駅、東京メトロ銀座線の田原町駅となる。
なぜこの通りが国際通りと呼ばれているかといえば、今の浅草ビューホテルのある場所にかつて、浅草国際劇場があったからだ。 僕も行ったことはないのだけれど、1937年(昭和12年)から1982年(昭和57年)まで存在していたということだ。
高見順の小説『如何なる星の下に生まれ』にも登場するこの劇場は、松竹歌劇団や美空ひばりなどが公演を行ったそうだ。 美空ひばりが狂信的なファンに塩酸を顔にかけられたのもこの劇場だ。意外なことにフランク・ザッパやキング・クリムゾンといった海外のアーティストも来日公演をしている。
その国際通りの真ん中ぐらい。浅草今半のビルから西にのびているのがかっぱ橋本通りだ。 道路には「上野へ近道」と書かれたパネルが埋められている。
個性的な商店が並ぶ中、カッパのオブジェがあちらこちらにあるのも特徴だ。このオブジェがなんともフェティッシュなのだ。
最初に造られたというオブジェが“縛られかっぱ”だそうだ。 マゾっけのあるカッパなのだろうか。 しかし、そうではなかった。 古老によれば、縛られ地蔵からの発想でカッパを縛っていたのだそうだ。
ちょっと戻って、道具街へ行けば、金色のカッパもいる。 世の中には金粉フェチという人たちもいるが、ここのカッパはまさに全身が金色。 再びかっぱ橋本通りを上野方面へ歩くと『幸来』という町中華が見えた。 昔ながらの町中華で、店頭のガラスケースにはサービスランチと書かれ、その日の日替わりメニューがサンプルとして入れてある。 この日は味噌ラーメン、生野菜、中華丼だった。
店内に入ると、元気のいい店主が迎えてくれる。 これまでの文章に出てきた古老の話はこの店でサービスランチを食べながら聞いたものだ。 店を出て、再び歩き始めるも、あっという間に、昭和通りまで出る。 こちら側には「浅草への近道」というパネルが道に埋められていた。
幸来
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