29.中国人原型師、来たる!
・「パチモン&バッタモン」のイメージは今すぐ捨てろ「中国人が作ったフィギュア」って聞くと、どういう印象ですか。 やっぱり、数年前にニュースで報じられた著作権無視の遊園地みたいな「パチモン&バッタモン」のイメージがあるのではないでしょうか。 いやいや、いま向こうのオリジナル造型のレベルはこうですよ。 抜群すぎて腰抜けるよ。 これを作った原型師の名は「袁星亮(ユェン・シンリョウ)」。 ゲームのキャラクターデザインをしながらフィギュアも作り、中国国内のコンテストで何度も賞を受けている人です。 男性、女性、子供の表情や身体のラインに見える文法の使い分け。 浮遊する金魚というファンタジックなモチーフ。 そこに鞍と幌という乗り物表現のチョイス。ハイレゾ系イラストっぽい画風。 おしゃれさがすごい。 「中国=パクリ天国」というイメージは今すぐ捨て去れ!
・優れたクリエイターが育つ環境になったゲームやアニメに多く触れている人はもうご存知かと思われますが、ホントごく最近から、オタクコンテンツ関係における中国のレベル向上がヤバいんです。 部分的には日本を超えてます。どうしよう。 クールジャパンの号令も勇ましく、日本が国を挙げて「オタクコンテンツ」を海外に売りに行き始めたのが数年前です。 クールジャパン商法は、海外のクリエイターに間違いなく影響を与えてきました。 その目的でやってきたんだから、そりゃめでたいことです。 アニメやゲーム業界では、下請けとして中国、台湾、韓国、ベトナムなどのスタジオを使ってきた経緯もあります。 日本のアニメやゲームも元々人気がありました。 ガレージキットの世界では、わりと早くから台湾や香港のアマチュアクリエイターが頭角を現しておりました。 ちょっと分かる感じしますでしょ。 その辺の人たちってアニメとかゲームとか萌えとか好きそうでしょ。 そんな下地があってですね。 いよいよというか、ついにというか、中国本土から異能が出てきたのです。 13億の人口が支える将来性を背負って。
なにしろ近年の中国は人口が多くて金回りも良いんだから、優れたクリエイターが現れるのは時間の問題だったのです。 ワンダーフェスティバルも上海で行われる予定があるくらいです。 それくらい、いま中国のフィギュア作りのレベル向上がヤバい。
・なんかもうアートの文脈で見てほしいこれも同じく袁星亮の作品ですけども。 ぐっと寄って見てみますと、彼のイメージの非凡な様がわかりましょうか。 大陸風の瓦で葺いた東屋、橋の先には雲に乗った亭。 女神の頬のあたりから小川が滝となって落ちています。 女神の穏やかな表情はあくまで端正。 ひび割れに永遠の時の流れを感じます。 瓦、屋根飾り、柱。 ディテールのすべてが唐風というか大陸的で、彼のアイデンティティからまっすぐ素直に造られたものだとわかります。 日本の造形家からは決して出てこないイメージ。 見ててすごくおもしろいです。 下半分には「死と破壊」の空気をまとわせ、上半分には生命力あふれる鳳凰と花を配置。 美術の文脈で見ることもできるアート作品となっておりました。 鳳凰の羽根と花弁が溶け合うような精緻な造型は、彩色されたらどんなに美しくなるのか想像さえつきません。 会場での僕は「ぐわー、マジか……。すっげ、おもしれえ……」などとつぶやきながら、5分間くらいずっと鑑賞し続けたのでした。
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