・時間を止めてコレクション可能なものにしたい
ガレージキットは主にレジンキャストという合成樹脂が素材となります。
つまりカチカチに硬いものなんですね。
それなのに、ひとは柔らかいものを表現したがる。
美少女フィギュアの風に舞うロングヘアとか、モンスターのたてがみや触手など、ふわふわでブニョブニョな柔らかいものを、カチカチの素材を使って表現することができるジャンルなんすね。
なんだか古代ローマの大理石像みたいじゃないじゃないですか。じゃないですか。
ねえ。
つまりガレージキットは「想像上のイメージを、時間を止めてコレクション可能な物体にする」という縮小彫刻の芸術でもあるわけ。
褒めすぎた。
でもそれもまた人間の欲望ですよ。

と、丁寧な前フリをしまして、パンツです。
パンツのガレージキットです。
サイズはほぼ1/1。
原寸です。
塗装済み完成品として並べられていたこのパンツ。
もちろん素材はレジンキャスト。
カッチカチです。
だから「履かれた状態」の形をしています。
というか、この状態のパンツを、そのままに飾っておきたい欲望の結晶なんでしょうな。
わかりそうでわからない感情だ。

パンツから主(あるじ)がスポッと抜き出された状態のままの形をしてそこにある違和感がすごいです。
プラモデルやフィギュアにパンツが彫刻されていることは、業界的には当たり前になっております。
そのパンツ部分だけを作る。
しかも実物大サイズで作る。
履けないので(壊れちゃう)、機能としては飾り物でしかありません。
純然たるオブジェです。

・技術や道具が衝動を産み、人間は無限に進歩していく
なぜこんなものを作ろうと思ったのか、作って頒布しようと思ったのかはわかりません。
レジンキャストで立体を作ることができるから思いついたのか、とにかくパンツが欲しくて作ったのか、どちらが先だったのかわかりません。
でも、レジンキャストという素材があることが、このパンツのフィギュアを思いつくきっかけになったことは間違いないと思うんです。
素材や技術やテクノロジーが人間の未来を拓いていくように、そこに道具と材料があるから、まったく新しい衝動が生まれるんです。
人間の発想力が無限な理由は衝動にキリがないから、そんなことを教えてくれるパンツの話でした。
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