3.今回エッセイを書いてくれた方:普通自動車

自動車

・「通い慣れない道」

私はもう10年近く同じ道を走り続けている。

私と主人の一家が住む八王子から主人の職場である世田谷までの間を

週5回、多い時は週に6回往復することもある。

これだけ何回も走っていると

私がもうその道を走ることに飽きているのではないかと思うのではないだろうか、

そんなことはない、私はまだこの道を走ることに飽きていないのである。

 

道というのはいつも同じように見えて常に違う表情を見せてくれる。

一番分かり易いのが季節によるものだろう、

冬の今の時期は並木の葉は枯れてしまっているが

湿度が低い分、景色が綺麗に見える。

春になれば草木が生い茂って景色が色づき始めるし

夏にはそれがさらに緑々しくなっていく、

そして秋には紅葉に変わっていくといった風にだ。

 

天気だって毎日少しずつ違う、

基本的には晴れていることが望ましいのだが

たまに雨が降るとスリリングな気持ちで走ることができる。

雪の日なんかはまるで障害物競走に挑むような気分だ。

 

そして一緒に走る車達、

みんな同じ時間に走ってはいても

顔を合わせる車は毎日変わってくる。

今日は誰に会えるだろうかと

いつも道路を走るのが楽しみなのだ。

もちろんたまには別の道を走ってみたくはなるのだが

要は気持ちの持ち方ひとつで

同じ道でも楽しむことができるというわけなのである。

 

しかし体調が悪い時はさすがに辛い。

ひどい日なんかは前の車との車間距離も分からなくなるし

真っ直ぐ走ることすら困難な状態で走らなくてはならない場合もあるのだ。

しかしそんな状態の時でも私は主人に対して

決して休暇を申し出たりはしない。

なぜなら主人を行きたい時に行きたい所まで乗せていくことが

私に与えられた使命であり、

それが出来なくなった自動車など

ただの鉄の塊に過ぎないと思っているからだ。

あと何年この体が持つかは分からないが

できるだけ私を雇ってくれた主人のために働き続けたいものである。

 

だたし困るのが主人の息子さんが私を運転する時だ。

あのお子さんは最近免許を取ったせいなのか

私を運転するなり友達を何人も乗せて

猛スピードを出したり、峠道を攻略しようとしたりと

無茶なことばかりをさせてくる。

おまけにガソリンを入れずに家まで帰るありさまで

日曜日の夜にこき使われてしまった時なんかは

私の体力はまさに赤信号、

そんな状態で次の週を迎えなければならないのである。

運転の苦手な奥さんもそうだが

できれば主人以外には私を動かさないでほしい、

今の生活に一つだけわがままを言うとするならばそれに尽きるだろう。

 

鎌形のお礼コメント:

普通自動車さん、ありがとうございました。

文章からもとても真面目な性格であることが伺えたのですが

10年も運転されている割には随分写真が綺麗ですね。

もしかして新品だった時の写真を使ったんじゃないですか??

 

4.今回エッセイを書いてくれた方:ペンギン に移動

 

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