11.自分には、籠もる理由がある

・2014年、記録的大雪の日

2月の7,8日の首都圏は大雪に見舞われ、交通機関は大幅な遅れとなる。

関係あるか知らないけど、株式市場の暴落に付きものの飛び込み自殺もあり、各地で移動難民が発生したという。

しかし記録的大雪ということで、翌日からせっせと雪かきに励む姿があちこちで見られ、自分もヒーヒーいいながらかいた。

翌週末の14日、午前からすでに雪が降り出している。

今週した雪かきは何だったのか、自然の前にしたときの無力さを感じずにはいられない。

 

しかし、その14日は昼過ぎにはモコモコに防寒対策をとって、とっとと早退。

暖かな家で、3時頃からおでんの仕込みを始めるという極楽感。

ついでに土日まで家に籠もり、おでんだけでなく肉豆腐までつくって家族に振る舞うなど、楽しく週末を過ごすこととなった。

なぜか?

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・1998年、大雪の日

首都圏は、昼過ぎから雪が降り出している。

この調子なら、珍しく雪が積もるかもしれない。

久しぶりのことだ。

 

そして定時。

まあ早めに帰った方が良かろうということで、仕事の雑事を残して帰ることに。

中央線は普通に走っている。

止まるなんてことはそうそうない。

 

そして新宿駅。

小田急線ホームが混雑して、ちょっとした騒ぎになっている。

どうやら電車が止まっているらしい。

ということで新宿駅で足止め食らい、本でも読んで気長に待つことにする。

 

しばらくすると、再開すらビミョーなアナウンスがある。

復旧の見込み立たずとなると、ちょっと考えなければならない。

そこで思ったのは、小田急線ではなく京王線で永山まで行って、小田急多摩線に乗り換える手があることを知る。

京王線は平常運転であり、小田急多摩線も遅れながら運行はしている、いつもより30分ほどのロスとなるが、この際仕方ない。

ということで、京王線経由で帰ることにした。

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・雪夜の罰ゲーム

永山までの京王線は快適だった。

軟弱な小田急線に比べて、京王線のたくましさに惚れ惚れする思いだ。

実にいい気分で京王永山駅から小田急永山駅に乗り換えする。

が、駅の様子が変。

大幅遅延で、30分から45分に1本しか走れないとのアナウンスだ。

寒さが厳しくなっているというのにこれは酷い。自分の前世は相当な悪人だったのかもしれない。

かじかむ手足の指を動かしながら電車を待つと、1時間かかってやっと来る。

 

来るが、満員でとても乗り込めず。

ホームでは半分ほどの人が取り残され、何とも言えないタイタニックな気分に包まれていく。

また1時間待つのか、いや次の電車も乗れないかもしれない、という不安が一杯の中、反対ホームに移動する人がちらほらいる。

一旦、終点の唐木田駅まで行ってそのまま折り返すという作戦だ。

これは妙案だということで、自分も便乗して早々に反対ホームに移動し電車を待つ。

前の電車はガラガラで、いかにも暖房が効いてそうな暖かな電車を励みにひたすら待つ。

 

待つが来ない。

来ない上に、小田急多摩線も運休。復旧の見込み立たずとのこと。

罰ゲームはさらに続く。

「ならば、タクシー」と気づいた者から全速力で駅からタクシー乗り場へと殺到する。

ヒールを履いた女性が壮大に蹴躓いて転んだが、誰一人として気にする者はいない。

自分もだ。知るか

 

・さらに極寒のタクシー乗り場

タクシー乗り場では、自分は50人ほど後の列に着くことができた。

これなら全然良い方。

だが、タクシーはなかなか来ない。

15分ほどで1台来るぐらいで、ホーム下の冷たい風が吹き抜ける場所はさらに厳しさを感じる。

マフラー、ネックウォーマーの類いは無し、手袋すら持ってない。

真剣に寒さが身に染みてくる。

 

1,2時間思考停止状態で待っていると、後列の人たちがまた走り出し駅に向かっている。

何だかよくわからず見ていると、なんと電車がゆっくり走ってきた。

しかし、完全に出遅れしまって今から走ってもとても間に合うタイミングではない。

あきらめてタクシー乗り場でそのまま待っていると、電車はしばらく停車し全員乗り込んでから発車という親切対応。

自分はその様子を見ながら少し涙ぐむ。

生命の危機がにわかに現実味を帯びてきた。

 

さらに数時間後。

すでに全員仮死状態に近いなか、ひとりの中年が皆に乗り合いを提案する。

一人一台では確かにラチが開かない。

数人ずつ乗り込むことにする。

ところが、言い出しっぺの中年は自分一人乗り込むとさっさとタクシーを走らせ行ってしまう。

全員唖然としたまま、流す涙も枯れてしまっていた。

 

自分の番が来たのは2時半過ぎ。

この頃になると皆連帯意識のようなものが芽生え、後ろに挨拶して乗り込むようになっている。

自分も「失礼します」とお辞儀してタクシーに乗り込む。

しばらくは固まっていたが、同乗のサラリーマンとなぜか名刺交換して、最終的に家に着いたのは3時過ぎ。

自分はこの日を境に、天災には逆らわないよう心に決めたわけだ。

 

ちなみに『岳』の最終巻は、身につまされて涙無しでは読めません。

 

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