5.今回エッセイを書いてくれた方:電子レンジ

電子レンジ

・「慰安旅行」

旅行はその人の本性を垣間見ることができる

数少ないチャンスだ。

 

先日、私達「橋本家の家電」達は初めての慰安旅行に出かけた、

日ごろの疲れを温泉で取ろうと

私が仲間達に呼びかけ企画した旅行である。

 

私達が集まったのは橋本君が一人暮らしを始めた約1年前、

その時は新品だった私達もそろそろ疲れが見えてくる頃だったし

親睦を深める意味でも旅行をするにはちょうどいい時期だった。

 

約1日半もの間、橋本家からは電化製品が無くなってしまうが

彼は我々が旅行に行くことを快く了承してくれたのだった、

我々はなんともいい持ち主に恵まれたものである。

 

さて、話は「旅行中に垣間見える本性」に戻るわけだが

それは旅館に着く前から既に見えてしまっていた。

 

まず、今回の旅行は東京から伊豆まで

レンタカーを使って移動するというものだったのだが

驚いたことに参加者4人中の2人、

冷蔵庫と炊飯器が免許証を財布に入れていなかったのだ。

 

みんなで交代しながら運転しようと言っていたのに

「いや、オレが持ってなくてもあと3人いるからいいかなと思って」

とその2人は誰にも相談することなく決めていたのである。

 

そうなると運転は私と電気ポットだけでしなければいけないのだ、

この時点で私はこの旅行に対して多少の不安を抱いていた。

 

続いては旅館に着いた直後のことだ、

高速の渋滞を抜けてようやく落ち着ける部屋に入った我々は

旅行カバンを置き、すぐに楽な格好へ着替えた。

 

そして私がほんの数分間トイレに入って出てきた次の瞬間だった。

 

なんと先ほどと同じ冷蔵庫と炊飯器の2人が

いきなり枕を押し入れから出して寝ていたのである!

 

私がなぜ寝ているのかと訊くと冷蔵庫からは

「まだ夕飯まで時間があるからいいじゃん」という返事が、

この旅行は親睦を深める目的も兼ねているというのに

彼らはそれをちっとも理解してくれていなかったのだ。

 

さらにたまげたのは露天風呂に入った時だ、

普通なら先にシャワーを浴びたり

少なくともかけ湯をしてからお風呂につかるものだが

冷蔵庫の奴は裸になるなり

いきなり湯船にダイブしやがったのである。

 

これは何というデリカシーの無い行為であろうか、

しかもそんなことをした後に

「ふぅ~温まるわぁ~」などと言うものだから

なんとも憎たらしいものである。

 

冷蔵庫が体も温めずにいきなりお湯に浸かったことで

温泉の温度はすっかりぬるくなっていた、

さすがに炊飯器もこの犯罪的行為にはたまげていたようだ。

 

どの行為に対しても本当なら怒って注意をしたいところだが

電子レンジでありながらイマイチ心がアツくなれない私は

優しすぎるのかそれとも根性が無いだけなのか…

 

とにかくもう仕事仲間とプライベートで遊ぶことは2度と無いだろう。

 

鎌形のお礼コメント:

電子レンジさん、ありがとうございました。

ただ内容が旅行のエピソードって!!

今度はもう少し電子レンジらしい電化製品っぽいお話をお願いしますね。

 

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