9.棚の上のエルフ
・まめじゃないとできない11月後半ともなると、この国はクリスマス一色になる。 テレビを付ければクリスマス映画、ラジオをつければクリスマスソング。 町を歩けばどこもクリスマスセール。
そんな中、ここ数年で段々と広まってきた物がある。 それは「棚の上のエルフ」と呼ばれるもの。 エルフとはサンタクロースの家にいる小人たちのことで、子供たちの為にプレゼントを作ったり包装したりしてサンタクロースを手伝っている、と昔から子供たちに信じられている。 何年か前にある絵本が出た。 内容は 「サンタが世界中の子供たち全員が、良い子にしているかを確認するのは大変。だから、エルフ達が毎朝子供達の家に行って様子を見て、夜中にサンタの家に戻り、良い子にしているかどうかをサンタに伝えている。そしてまた朝になると、子供達の家に戻ってくる」 というもの。 ちなみにこの本には人形のエルフ一体が一緒に付いてくる。 しかも「毎朝子供達の家に戻るが、毎朝違う場所に戻ってくる」らしい。それが子供ウケしたらしく人気が出てきたらしい。
つまり「棚の上のエルフ」を一度始めたら、親は毎晩エルフの居場所を変えておかねばならない。 うちの嫁さんはクリスマスが大好きだから、そういうのだけは自分で率先してやる。 うちの子供たちもクリスマスシーズンになると、毎朝起きたらまずエルフが家のどこに戻ってきたのか探す。
ちなみに、「棚の上のエルフ」には一つ大切なルールがあって、「エルフには絶対に触ってはいけない。 触るとサンタの家に毎晩戻らなくなる」というものだ。
そして、嫁さんは時々肝心なことを俺に言い忘れる。
・とにかく謝罪文俺は何~んにも知らないから、朝、エルフの横にあった置物を邪魔だろうと思い、エルフをどけようと触ったんだ。 もちろん子供たちの目の前で。
そしたら「あ~ッ、パパ触ったぁ!それ触っちゃいけないんだよッ、どうするのッ!!」と涙目で猛烈なブーイング。
そ~んなこと、じぇんじぇん知らなかったから、子供の前で奥さんに「いっけね、触っちゃったよ、どうすればいいんだっけえ?エヘ~」な~んてとぼけて聞いたら、「あッ、あ~ッ、そッ、そッ、そうねえ、触っちゃた人がサンタさんにお手紙を出せば、許してくれるって聞いた事あったわぁ~」と奥さん。 忙しいから適当に思いついたアイデアを口にした。
「エッ、今なんて言った???手紙を書く??ハア~」というジェスチャーと共に嫁さんを睨みつけた。そんな事を子供たちに言ってしまったら、やらねばならん。
まだ朝7時である、ただでさえ忙しい朝である。 いい年した俺が紙とペンを持って、子供たちが朝食を食べている横で書き始めた。
「拝啓サンタさん。ゴメンなさい、サンタさん。あなたのエルフを触ってしまいました。もう触らないので許して下さい。パパより」と。書き終えた後に、もう一度嫁さんを睨みつけた。
こんな年でサンタに手紙を書くとは思いもしなかった。 もうバカである。 親バカという日本語を思い出した。
・わずかな妥協から始まる大きな負担12月はやはりこの国でも一番忙しい月。 だから普段から仕事が忙しい奥さんは猛烈忙しくなる。 当然毎晩疲れて帰ってくる。 先日寝ていたら、寝ぼけた声で「あなた~、悪いんだけど、ムニャムニャ、、、エルフを違う所に置いてくれる?もう私は疲れたから、、、、ムニャムニャ、、、お休みなさい、、、」と一言。
言うまでもなく、それからは毎晩エルフの場所変えは私の担当になってしまいました。笑
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