22.曇天であってもカサを持たずにいたい

・カサは嫌いなのです

カサを持ちたくないし、できることなら差したくもない。

雨は嫌いではないが、カサが嫌い。

雨…あきらめて差す
小雨…しぶしぶ差す
霧雨…嫌々差す
ぱらつく…持たないで強行軍
晴れ…持つわけない
曇り…持つわけない
曇りのち雨…降らないほうに賭ける

こんなふうに嫌っている。

指すか持たないかの選択肢としているので、折りたたみカサは、「急な雨への備え」だからダメ。

骨が16本とか32本もあるカサが登場しているが関心ナシ。

レインコートは……それが嫌でカサにしたのに、記憶があるうちは変えられない。ゴム長靴も。

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自分が通勤などで使っているのはビニールカサだ。

布製の高いのは絶対に買わない。駅のNewDaysや百均、コンビニにあるビニールカサで、しかも短い方がいい。

たまにビニールカサでも、70cmもあるジャンプ式のしっかりしたのもあるが、自分は好きではない。

60cm以下の、持ってもできるだけイヤにならないのがベスト。

あと、600円以上するのはもはやビニールカサの範疇を超えている。

 

・2015年のカサは3本

いま使っているビニールカサは3本あり、自宅と勤務地に1本ずつと、流動する1本だ。

自宅に2本のときもあれば勤務地に2本あるときもある。

どちらかに3本偏るのはダメ、としている。

そういうときは雨降りでなくても1本持って行く。

簡単に言えば「神経質な置き傘」となるが、それは自分の場合、勤務地が時期ごとに複数変わるのと、ビニールカサは誰かに持って行かれやすいせいである。

単純な本社と自宅との往復なら2本でもいいが、やはり3本あれば勤務地の変更でも問題なく対応できるのがいい。

それと盗んでいくのは本当に勘弁してほしい。

ビニールカサはなぜこうも簡単に盗めるものなのか、持って行く奴に一度問い詰めたい。

日本人のモラルについてよくネットで自慢話の体で語られたりするが、ビニールカサの盗み癖に限ってはそれらの美談とはかけ離れた卑しさだ。

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ビニールカサは盗まれて当然、嫌ならキチンとしたカサを買えばいい。なんて開き直られても困るが、その本質はビニールカサは使い捨ての価値しかないということだろう。

実際何人かに、なんでビニールカサしか買わないの?お金ないの?と、ちょっとかわいそうな人扱いを受けた。

だが、自分がメインで使っている、本命カサだ。

決して今日だけのものではない。

こちらに非があるとは思えないのだが、力説する気持ちも萎えてくれば、その空気に押さえつけられてしまうもの。

ただ、こういうような自分の子供っぽい固執の仕方には、それなりのおかしな理由があるのも事実だ。

 

・1989年のカサ3本

カサはオッサンが捨てたコウモリみたいなものでいい、新品は持たない、と誓ったことがあるが、さすがに働きだすと毎日のことでもあるし、いまは梅雨でちゃんと使えるカサが必要だ。

決してたくさんではないが、自分で稼いだお金がある。

昔のことは昔のこととして、カサを買わねば。

そうだ丸井なら品数豊富だし気に入るカサがあるはずだ。

見れば、オッサンコウモリのカサなんかなく、持つ柄や先が木製でできたオシャレなカサがたくさんだ。

そのなかで青い布柄のカサにした。青いのにしたかったのだ。

そして一番安いということもポイントだ(1980円が安いのは、バブル期なのと、ビニールカサが1回使い切り的軟弱商品だったから)。

1989b

そして雨の日の朝、さっそく買ったばかりのカサで出社。

しかし降りる駅の改札を出た頃、自分はカサを持っていないことに気づく。

電車に忘れた……。

なんということだ。買ったばかりだというのに……。

駅から会社までは10分ほど歩かなければならない。

仕方なく、駅に隣接するカサ屋だかクツ屋だかわからない店でカサを買う。

お値段4500円。

置き忘れがないよう、あえて高いカサにして意識を強く持つためだ。

1989a

無事会社に着き、一日の仕事が始まり夜には終わる。

まだ雨は降っている。
4500円のカサは高いだけあって、持ち手が滑らかで握りやすい。

布部分も1980円カサとは違って細かく見える。

雨のはじき方が強くすばらしい。

とんだ出費だがそれだけのメリットはあったと思う。

1980円ムダにしたというのに、機嫌良く電車に乗り、駅に着いて降りる。

雨はまだしつこく降っているが、自分にはカサがある……いや、ない。

再び身が凍る。

また電車に忘れた…。

茫然自失とはこういうことを言うのだなあと微かに残る意識を持ちながら、駅の売店でカサを買う。

1980円だが、例のオッサンコウモリだ。

それしかないのだから仕方ない。

1989c

翌日はまたも雨。

幾分弱まってはいるが、カサを差していく。まだダメージが残っているがこのカサを大事にしようと心に決めて通勤電車に乗り込む。

東海道線では、もみくちゃにされながらなんとか駅に着く。

この電車と乗客は容赦ということをまったく知らない。

盛んな押す、踏む、グリグリに耐えなければ社会人をやってられないのだ。

そんなことを思いつつ駅の改札を出たとき、三度デジャヴが起きる。

またまた電車に忘れた…。

二日で3本。

ほとんど泣き顔でキオスクでビニールカサを買う。

ちゃちな作りでちょっと風が吹けば折れ曲がってしまうオモチャみたいなカサ。

これが777円。

もう自分はビニールカサだけにしよう、買うだけ無駄になる。と自嘲気味に、でも固く決心する。

その使い切りビニールカサが半年以上無事使えたのも、ヒトの成長故なのかカサの神の戯れか。

 

・1974年のカサは5秒の命

自分にはいまだカサがない。

上の兄弟は皆持っているというのに、ビニール風呂敷をかぶるだけでは、それは差別であり不公平というものだ。

園児と思って見くびってもらっては困る。断固要求し勝ち取らねばならない。

2015

ねだりにねだった昭和49年の梅雨のある日、ついにカサを買ってもらうことになった。

どこの商店街にもカサ屋という専門店のある時代だ。

子供用もちゃんとある。男のカサは青に決まっている、女子は赤。ついでに大人は黒だ。

当時、最新型のワンタッチ傘、いわゆるジャンプ式にしてくれた。

もちろん、色は大好きなガッチャマン・コンドルのジョーの青。

1974b

有頂天で店から出て、さっそくワンタッチしてダッシュするが、走りにくいゴム長靴と強い風に大きく煽られて盛大に転倒。

下敷きになったカサはボキボキに折れてしまった。

「買って5秒で壊した客はボウズくれえだ」

と店主はヘンな褒め方をするが、母親からは大目玉を食らう。

もうカサはねだらないよ、壊れたのでいいです、とおかしな約束をし心にも固く誓う。

結局いつものビニール風呂敷に逆戻り。

だがいつにも増して、首にキツく結ばれてることがわかった。

 

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