7.鼠小僧次郎吉・静御前

天[あめ]が下古き例は白浪の
身にぞ鼠と現れにけり(鼠小僧次郎吉)

盗賊・鼠小僧次郎吉の辞世の歌である。

意味は、「過去の例(昔の盗賊たちの例)にもれず、おれが盗賊の鼠小僧次郎吉であると、世間中に知れ渡ってしまったなあ」。

「古き例」は、過去の大盗賊の例。

「白浪の」は、「白浪五人男」などの大盗賊にちなむ。

「身にぞ鼠と」は、「私が盗賊の鼠小僧次郎吉だと」。

鼠小僧次郎吉(1797~1832)は、江戸後期の盗賊。大名屋敷中心に忍び込んで荒らした窃盗犯。獄死。鳶職が本業とされ、義賊として伝えられる。小男だったとか。

7

しづやしづしづのをだまき繰り返し
昔を今になすよしもがな(静御前)

「静よ、静、静と(しず布を織るために糸を巻く苧環[おだまき]のように)繰り返しあの方が私の名を呼んだ昔のころを、もう一度今に取り戻したいものだなあ」といった意のこの歌は、静御前の辞世の歌である。

静御前は源義経の愛妾[あいしょう]で、白拍子[しらびょうし]。

容姿に秀で、歌舞が得意。

その静が、吉野山で義経と別れ、捕らえられて鎌倉に移送される。

静は移送先の鎌倉八幡宮において、頼朝・政子夫妻らを前に、義経を恋慕する舞を舞った。

その時にうたったのがこの歌というわけである。

この歌に先駆けて、静は

吉野山峰の白雪踏み分けて入りにし人の跡ぞ恋しき

(吉野山の峰に積もった白雪を踏み分けて、奥州に下って行ったあの人が恋しく思われる)

を舞い歌って、頼朝の激怒を買った。

本来、鎌倉幕府の繁栄を祝うべき場で、逆賊の義経を恋い慕う歌を舞い踊ったからである。

そして、その場をとりなしたのが頼朝の妻の政子だった。

結果、静はお咎めなしに終わった…というストーリー。

これらの歌には、去り行く愛人=義経を恋しがり、楽しかった昔日を懐かしむ静の心情が表れていて、哀切!

静御前の生没年は未詳。

「二人静」「吉野静」など、能や歌舞伎にも多く作品化されている。

 

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