4.肉芽物故割れた!
・よんどころなく奥へ奥へその日は時差出勤で、サラリーマンの通勤電車というより学生の通学電車という時間帯。 混んでいるわけではないが、別に座れるわけもなくつり革もだいたい埋まってる感じだ。 この先もどうせ混まないのであれば、無理に割り入ってつり革確保するまでもないのでドアのある中央部に立つ。 人がいなければここはエアコンの当たりも良く快適だからだ。 日頃の通勤電車との違いを満喫する。 ところが、ひと駅着いたところでヒトがずいぶん乗り込んできた。 ドア部の真ん中ででーんとしてられない感じなので避けることに。
電車の長座席は車両の端に向かい合うように並んでいるが、平行してつり革があり、普通つかまっている乗客が2列できるようになっている。 これがもう少し混雑してくると真ん中にも人が入り、3列になったりする。 するが、このタイミングがなかなかビミョーで難しい。 大して混んでもいないのに、3列になろうと中に進むとなかなかに邪魔くさい。 とくに、女性からの、「かすっても禁止!」のひと睨みに細心の注意を払わねばならない。 3列になろうかどうか、その入り口を「祈りの間」と呼んでいる。 もちろん勝手な呼び名だが、この入り口から奥に進むには絶妙なタイミングと相応の覚悟が必要なのである。
・巻き爪人間とフラフラ人間との遭遇唐突だが、左右とも足の親指が巻き爪である。 簡単にいえば爪が肉に食い込んでしまうことだが、想像できるとおり痛い。 歩く・走るは大丈夫だが、サッカーのような蹴ることはできない。うずくまって起き上がれなくなる。 ただ日常は何ともないので、ロクに動きもしない中年のいま、このことを意識するときはまずない。
その巻き爪人間が祈りの間で迷っている。 3列になろうと中に進むかの逡巡である。 ドア部中央はかなり密度が高い。 この状態で祈りの間にとどまりすぎると、「立ちはだかる壁」としてドア部軍団たちから圧力を掛けられることになる。 しかしタイミングを誤って早まると、つり革軍団たちからの冷たい舌打ちやら押し返しやらとなる。 結局、どのタイミングが正しいのかは「後に続く人がどれだけいるか」という現実の混雑率次第となる。 意を決して中に進んでみたが、それは自分だけで、後に人が続いていないのでフライングとなってしまった。 厳しい視線と仕打ちに、泣きたくなるような寂しい気分にさせられる。
つまり今回はタイミングを誤ってしまったようで3列目のポジションを何とか確保しようとジタバタしているわけだ。 しかしもっと中に進むとスペースがある感じなので、中央部にまで進んでみる。 目の前にいるのはフラフラ人間である。 フラフラしてるから他人よりも余計にスペースを取っていたようだ。 よし、ここが空いている。
・ヒトの肉がヒールに勝つことは不可能フラフラ人間とは、ケータイと小さめのトートバッグを持つ女性。 つり革にはつかまりたくないらしく、バッグとケータイをそれぞれ手に持っているせいでフラフラ人間なのだ。 つり革つかまっていればフラフラしなくていいのに、と思いつつスペース確保できたことに心の中で手を合わせる。
その安心が油断となったのかはわからないが、電車が大きく揺れた拍子にフラフラ人間は大きく後ろにふられ、こちらの親指に着地。
はい、巻き爪箇所にクリティカルヒットです。 ヒールはただでさえ痛いのに、ピンポイントで自分の泣き所だもんで「い゛だ っ ! !」と声を挙げてうずくまる。 というより視界が一瞬消えて下に落ちた感じ。 ところがフラフラ人間は、とっさのことでどう対応していいかわからないようで(と思いたい)、ガン無視。 もう一心不乱にケータイに集中。 ただ、さすがに今度はつり革つかまってのポチリポチリ。
いつだったか、お笑い芸人の千原ジュニアさんがヒールに踏まれて足の指を骨折したニュースがあったが、確かにとんでもない破壊力だった。 あらためて傷口を見てみると、肉がぶっ壊れている。 肉を戻すような感じで整えてテープぐるぐるにしたらなぜか治ったが、肝心の巻き爪は治らなかった。
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