21.改めて、能「道成寺」の魅力
これまで20回にわたり、「道成寺」の成り立ちや物語の構成について、資料や文献を引きつつ、あれこれと探ってきた。 これでこの能の背景はスッカリ理解できた! ということにして、ここからは「道成寺」の舞台へと探索の手を進めてまいりませう。
・能「道成寺」の魅力① 洗練されたスペクタクル「能」と聞くと、「幽玄→動きが少ない→眠い」というイメージがあるかもしれない。 が、どうしてどうして、「道成寺」という能は、70キロもの大鐘を天井からつり下げ、これを落下させて間髪入れずに飛び込むという、命がけの演技を披露するスペクタクルだ。
しかもドデカイ鐘のあつかいは、茶道の手前のように見事に様式化され、舞台上でのドタバタ感はまったくない。 洗練され尽くした動きが、上質な迫力を演出する。
・能「道成寺」の魅力② 乱拍子「鐘入り」と並ぶ見所は、シテと小鼓方による乱拍子。 これも他の能にはない「道成寺」だけの特殊な演出で、女の情念を極度に凝縮して表現する。 シテと小鼓方が一対一で気合いをぶつけ合う乱拍子は、切り詰められたシンプルな動きの繰り返しだが、その異様なまでの緊迫感に引き込まれ、時間を忘れて固唾を呑むことになる。 ・「道成寺」の魅力③ 見所の多さ鐘入りや乱拍子の他にも、見所の多いのが「道成寺」の魅力。 シテはもちろんのこと、ワキ、アイ、囃子方にも、それぞれ見せ場があって、どの場面も目が離せない。 実によくできたエンターテインメントだ。その場面展開を、順を追って整理しておこう。 ①鐘後見が「大鐘」を舞台に運び出して、吊り上げる ②ワキ(住職)とアイ(寺男)の登場、「女人禁制だ!」 ③前シテ(白拍子)の登場、「乱拍子」 ④シテが急の舞から「鐘入り」 ⑤アイの動揺、「鐘が落ちた!」 ⑥ワキの語り、「道成寺縁起」という因縁 ⑦鐘が上がり、後ジテ「蛇体」の出現 ⑧後ジテとワキとの対決
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