24.道成寺の見所② 女人禁制だ!

上掛かりの場合(前回参照)、鐘後見によって鐘が吊られると、ワキの道成寺住僧が登場して能が始まる。

 

・格の高さが衣装にも現れる

囃子方や地謡、後見の役者たちが裃(かみしも)を付けているように、ワキ僧も最上級の衣装で登場する。

金入りの角帽子(すみぼうし)に白綾の着付けと大口、最高位の色である紫の水衣、金無地の扇、数珠、そして小刀まで帯びている。

S.住僧

▲ワキ(住僧)

 

・ワキの名ノリ――鐘の再興供養、女人禁制

ワキは最初に自分が何者かを名のるのだが、その「名ノリ」のし方にも格の高さが表れる。

普通は脇座(前回の図参照)に立って名のるのだが、「道成寺」の場合は舞台中央の位置で名のる。

これを「真ノ名ノリ」といい、「道成寺」のほかは「石橋」「猩々乱」「熊野」に限って用いられる。

ここでワキは、「この寺の鐘は久しく失われていたが、新に鋳させて再興したので、鐘楼に上げて供養しよう」と、鐘の供養の経緯を述べる。

ただし、その鐘がなぜ失われたかについてはまだ明かさない。

ただアイ(寺男)を呼んで「さる子細があって、女人禁制だ。絶対に一人も女を入れてはならない」と固く申し付ける。

この「さる子細」については、事件が起きた後に語られることになるわけで、ここでは「ムム、何かあるぞ」と観客の好奇心をくすぐるという、実にミステリーな演出なのだ。

 

・アイの触れ、鐘楼固め

ワキの命を受け、アイは常座に立って「皆々承り候え」と、客席に向かって大声で女人禁制を告げる。

すなわち観ている私たちが、参拝者の役を振られているという構図だ。

そして触れをしたアイは、常座から目付→脇座→笛座と、舞台の四隅を通って慎重に歩を運ぶ

これは「鐘楼固め」といって、供養の場を結界するための呪術的な所作だという。

この歩をしっかり運ぶことで、その場の重々しさを高め、道成寺の庭の広さを表現する。

これもまた、シテが登場する場を演出するための重要な所作なのだ。

S.寺男

▲アイ(寺男)

こうして舞台の緊張感は最高潮に高められ、観客はドキドキ・ウズウズしながらシテの登場を待つのであります!

 

25.道成寺の見所③ シテの登場、乱拍子 に移動

 

One Comment

  1. Pingback: 23.道成寺の見所① 鐘を吊る | WEBぱるマガジン

コメントを残す