18.結局、根本は女だ!―キーワードを整理してみよう

これまで、能「道成寺」に関わるさまざまな説話や芸能を挙げてきましたが、このへんで一度整理しておきましょう。

「道成寺」を構成する6つのキーワード(→第4回)にそって表組にまとめると……。

第18回gazou

・『道成寺縁起』→山伏神楽「鐘巻」→能「鐘巻」→能「道成寺」

こうして眺めてみると、能道成寺の成り立ちが読めてきますね。

①出発点は『道成寺縁起』。
『道成寺縁起』は「女が執心から蛇になる」という説話の決定版で、しかもそれまでの説話にはなかった「日高川」という要素が加えられている(→第5回)

②山伏神楽「鐘巻」の影響で、「女が鐘入り」をする展開となった。
(→第17回)。また「僧」の呼称に注目すると、説話では「若僧」「○○寺の僧」と表現されているが、能では「山伏」となっている。これも山伏神楽からの影響ではないか。

③そして能「鐘巻」が成立した。
道成寺縁起については前ジテがたっぷり謡うし、蛇体となった後ジテのセリフには山伏神楽「鐘巻き」の影響が認められ(→第17回)、最後は女が成仏してTHE END。説明的で、辻褄も合ってる。(→第11、12回)

④「鐘巻」をギリギリまで洗練・昇華させて「道成寺」の成立。
乱拍子を中心に緊迫感を演出。ストーリーは破綻し、恋も吹っ飛び、ただ執心と緊迫のパフォーマンスに集中する。(→第11回)

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・女が「蛇」になるという発想

ここで一つ気になるのが、そもそも能「道成寺」の出発点とも言える「女が蛇になる」という発想だ。

「恋」を伴わない山伏神楽「鐘巻」は別として、女が僧を恋をする「道成寺縁起」の系統はすべて、その執心から女が蛇と化している。

鐘を離れてこの点に注目すると、恋する女が蛇になる、あるいは蛇が女になるって話は他にもいくつかあって、この線もなかなか興味深い。

「蛇」と「女」に注目して、「道成寺」と比較してみるのも面白いかもしれない。

次回はこのテーマで、ちょっと道草してみたい。

 

19.ちょっと道草①「蛇」は女で決まりなのか―「白蛇伝」と「三輪」 に移動

 

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